遺産分割協議が終わった後に遺言書が見つかったらどうなる?
遺産分割協議とは相続人全員で遺産の分け方につての話合いを行い、最後に相続人全員の合意で遺産分割協議書を作成し、完了するものです。
しかし、話合いが既に終了した後のタイミングで「遺言書」が見つかった場合、いったいどのようなことになるのでしょうか?
本来遺産の分け方は遺言に従うもの
遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合、すぐに開封はせず検認を
もしも遺産分割協議後に遺言書が発見されたら、まず第一に気を付けるべきポイントは勝手に遺言書を開封しないことです。
自筆証書遺言などの個人で作成した遺言書は、発見後、家庭裁判所において「検認」という手続きを行わなければなりません。法律上、勝手に開封すると過料に処せられる場合もありますので注意が必要です。
公証役場で作成した公正証書遺言はこの限りではありません。
遺言書の内容次第では遺産再分割協議を行うことも検討
検認の手続きを行うことで、見つかった遺言書が法的に有効であるかどうかがわかります。遺言書には書き方にルールがあり、例えば作成日の日付や捺印がない遺言書は無効となってしまいます。
有効な遺言書だと判明したら、そこに書かれている内容を確認します。
書かれている内容が、すでに完了している遺産分割協議の内容と同じであれば何の問題もありません。
ただ、遺産分割協議の内容と遺言書の内容が異なった場合、遺産再分割協議を行うかどうか検討しなくてはなりません。
なお、場合によっては、先に行った遺産分割が法律により無効になることも考えられます。
遺言執行者が指定されている場合
この場合は遺言執行者が再分割協議をするかどうか決めることとなります。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するための実行役を任せられている人のことです。ほとんどの遺言書で遺言執行者が指定されています。親族である場合と遺言書の作成をサポートした弁護士などの場合があります。
遺産分割協議の内容を優先する場合
「せっかく遺産分割協議がまとまったのに、また話合いや手続きを一からやり直すのは面倒だ」「遺言の内容と協議の内容がほとんど同じだったため協議の内容をそのまま採用しよう」というような場合も多いでしょう。遺産再分割協議をしないということに、続人全員が同意していれば、遺産分割をやり直しする必要はありません。
ただし、相続人のうち1人でもこの意見に反対する場合は遺産分割再協議を行わなければなりません。
遺産分割再協議になりやすい遺言書の2つのパターン
子供の認知
遺言書で子供を認知することを「遺言認知」といいます。生前は公にしていなかった故人の子供について、遺言書で認知をする方もいらっしゃいます。遺言認知が行われると、相続人の人数が変わってくるため、遺産再分割協議が必要になります。
相続人の廃除や廃除の取り消し
故人の意思で特定の人物を相続人から廃除することを「相続人の廃除」といいます。遺言書に相続人の廃除、もしくは、廃除の取消しが書かれている場合は、それによって相続人の人数が変わってくるため遺産再分割協議が必要になります。
これら2点については、遺言執行者の選任が必須となっているため、遺言書に書かれていると遺産再分割協議をしなくてはなりません。
遺産再分割協議を防ぐ方法は?
面倒な遺産再分割協議を避けるため、まずは故人の死後、できる限り入念に遺言書を探す必要があります。
直筆で作成する自筆証書遺言は、自宅や貸金庫、職場などを入念に探すと意外な場所から出てくることも多いです。また,弁護士や税理士に預けている場合もありますので,顧問弁護士や顧問税理士がいた場合は,そちらにも確認してみるべきでしょう。なお,2020年7月10日より,自筆証書遺言を最寄りの法務局で保管する制度が開始されます。この日付以降は,法務局にも確認するべきでしょう。
公証役場で作成する公正証書遺言であれば、公証役場の「遺言公正証書検索システム」を使って遺言書の有無を調べることができます。