遺産相続が起こったら、一番最初に必要となるのが「遺産の調査」です。
なぜ遺産を調査しなければならないのでしょうか?
相続は、法定相続人(法的に遺産をもらう権利のある人たち)間で、誰がどの遺産を相続するかを決めるための遺産分割協議をしなければなりませんが、そのためにはまず分割の対象となる「遺産(相続財産)」が明らかになっている必要があるからです。
遺産の範囲が明確になっていないと、遺産分割協議が始められないのです。
以下のような場合は特に遺産の調査は必須と言えます。
- 故人から生前にどのような財産を持っているか聞いていなかったので単純に分からない
- 故人が亡くなった後、故人と同居していた相続人から遺産について開示を受けたが、それが全部であるかどうか分からない(本当かどうか疑わしい)
相談に来られることが多いのは②です。
①の場合、通帳や保険証券や土地の権利証など、被相続人が保管していた資料などを洗い出すことにより比較的容易に遺産の全体像を知ることができます。
②の場合、故人に関する資料は全て故人と同居していた相続人が持っていて、こちらは確認できないという状態であるこがほとんどです。
この時、開示された内容を信じて受け入れ相続の分割の仕方の話し合いに移ることもできますが、少しでも不明確ではっきりしない部分、腑に落ちない部分がある場合は、遺産分割の話合いの前にまずは、遺産の調査を弁護士にお願いするべきでしょう。
遺産調査のメリット
弁護士が遺産調査を行うと、元々開示されていた遺産よりも遺産全体が増えることがほとんどです。遺産全体が増えれば、 受け取る財産が増えることになります。
弁護士が相続調査を行うことで遺産が増える主な理由は次の3つです。
- 開示された遺産には無い遺産が見つかるケース
- 故人と同居していた相続人が生前に故人から財産を譲り受けていたことがわかるケース
- 故人と同居していた相続人が、故人が亡くなる直前に預金を払い戻していたことがわかるケース(使い込み)
例えば、元々故人の名義だった土地や不動産を、生前に同居している相続人に名義が変更されることが判明した場合などは②にあたります。
この場合、土地・不動産を与えられた相続人には「特別受益」があることになり、それらを贈与されていない他の相続人との公平を図るために、贈与をされた相続人の取り分が減り、他の相続人の取り分が増えることになります。
※特別受益とは・・・相続人が故人から生前に贈与受けていたり、相続開始後に遺贈を受けていたり、特別に被相続人から利益を受けていること言います。 特別受益を受けたものが共同相続人の中にいる場合に法定相続分通りに相続分を計算すると、不公平な相続になってしまいます。
また、例えば故人が危篤状態で意識の無い中、故人の預金引き出されていた場合などは③に該当し、本来は勝手にお金を下ろすことはできませんので、お金を下ろした人はその分を返さなくてはならないことになります。
遺産調査で弁護士が行うことは?
- 開示された遺産以外の遺産の有無の調査
- 故人の財産が生前に贈与されていないかの確認
- 故人の口座や保険などから故人の意思によるものではないお金の引き出し有無の調査
②については
- 退職金が3000万円入ったはずなのに、亡くなった時点では100万円くらいの預貯金しか残っていない
- 実家の土地・建物は親の名義だったはずなのに、開示された遺産の一覧に中に入っていない
などの疑わしき点も隅々まで洗い出し徹底的に調査していくことが可能です。
③については
被相続人が預金の払い戻しについて判断できる状態であったかどうかについては、以下のような資料が証拠となるかどうか細かく調査していきます。
- 被相続人が通っていた病院のカルテ
- 介護保険の要介護度の認定資料
当事務所の遺産調査は迅速、丁寧、明解を理念としております。
具体的には、どのような遺産調査を行うかについて事前に具体的にご説明をさせて頂く点、遺産調査にかかる費用・実費について事前に明確にご説明させて頂く点です。当事務所では依頼者様の同意無しに勝手な調査をしたり、親戚関係のデリケートな部分に配慮せず調査を遂行したり、どの部分をどう調査したのか最終的に詳細な説明をしない、というようなことはございませんのでご安心ください。
相続財産の調査を依頼するのは弁護士?司法書士?行政書士?
財産調査は、時間をかければご自身で行うことも可能ですが、それにかかる労力や時間などの理由から専門家に依頼する方がほとんどです。
相続財産調査は、主に弁護士・行政書士・司法書士に依頼することができますが、どこに依頼すればいいか迷う方もいらっしゃるでしょう。
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弁護士 |
行政書士 |
司法書士 |
相続財産調査 |
〇 |
〇 |
〇 |
戸籍収集 |
〇 |
〇 |
〇 |
不動産の名義変更 |
△ |
× |
〇 |
相続放棄申述申立の代理 |
〇 |
× |
× |
遺産分割協議書作成 |
〇 |
△ |
△ |
遺産分割協議・調停・審判の代理 |
〇 |
× |
× |
結論から申し上げますと、親族での遺産の分割の話合いが絶対確実に円満に、後々のわだかまりなども一切無くできそうで、かつ、遺産のほとんどが不動産である、という場合は司法書士に依頼するのがおすすめです。それ以外の場合は弁護士に依頼するのがベストです。
上の表でも分かる通り、相続財産の調査に関わる業務のほぼ全ては弁護士の守備範囲と言えます。
弁護士の最大の特徴は、相続の揉め事に関する膨大な知見から、先々のあらゆるトラブルの可能性を見通した相続財産の調査ができるところにあります。親族の関係性や今後の争点となりそうなポイントを考慮した上での調査&アドバイスができるのです。
万が一、調停などに発展したときにも、すべての手続を任せることができます。
弁護士の相続財産調査は高額…は本当?
弁護士・行政書士・司法書士の費用相場
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費用 |
弁護士 |
20~30万円 |
行政書士 |
30万円~ |
司法書士 |
20~30万円 |
一般的に、司法書士や行政書士に頼む場合に比べ弁護士に頼む場合の方が費用は高額になると思われていますが、それは、司法書士や行政書士は最終的に代理をして交渉をしたり、裁判をしたりすることができないためです。細かく見てみると、実際には弁護士も司法書士も行政書士も費用の面ではあまり変わらないのです。
当事務所の相続財産調査の費用
遺産調査を行うような事案の場合、遺産調査が終わった後の遺産分割協議がすんなり進むことはあまり無いため、通常は、遺産調査のみを単独で受任するのではなく、遺産分割に関して受任した上で、遺産分割協議の前提として遺産調査を行う形となります。
ただ、遺産調査の結果、相手方が適切に遺産を開示していることが分かれば、遺産分割協議には柔軟に応じたいという方もおられますので、そういった場合は、遺産調査のみを行うこともあります。
当事務所の場合、遺産調査のみであれば10万円(税別)でお受けしております。
なお、遺産分割について受任する場合には、遺産調査は業務に含まれますので、遺産分割に関する弁護士費用とは別個に弁護士費用が発生することはありません。
弁護士費用とは別に、遺産調査にかかる実費としては、以下のようなものがあります
- 戸籍の取得費用
- 不動産登記の取得費用
- 金融機関からの取引履歴の取得費用
相続人の数にもよりますが①も②も1万円以下に収まる場合がほとんどです。③については、金融機関によっては発行手数料がかかる場合もあるため、若干高額になることがあります。