相続財産に不動産が含まれている場合、その「評価額」をめぐって相続人間で争いが生じることは少なくありません。不動産の評価方法には複数あり、評価額の違いが遺産分割の公平性に大きく影響するからです。
本コラムでは、相続における不動産の評価方法について、法律・税務の両面から解説します。不動産の公的評価基準や実務でよく使われる評価方法、裁判所での扱いなどを知ることで、トラブルを避けた円満な遺産分割に役立てていただけます。
このページの目次
1. 相続における不動産の評価方法とは?
遺産分割の際、不動産の評価額をどう決めるかは極めて重要なポイントです。評価額によって、各相続人が取得する財産の公平性が左右されます。
不動産の評価には主に次のような方法があります。
2. 不動産の公的評価基準とは?
(1)公示価格(こうじかかく)
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国土交通省が毎年公表する、特定の標準地の価格。
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不動産鑑定士による評価をもとに、正常価格として設定される。
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取引価格の指標や公共事業の算定基準となる。
ただし、公示価格は「標準地」に基づくため、個別の不動産の特殊事情を反映できないという限界があります。
(2)固定資産税評価額
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市町村が定める土地・建物の評価額で、課税の基準として利用される。
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公示価格の約70%が目安。
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3年に1回の評価替えであるため、地価変動に対するタイムラグが発生します。
(3)相続税評価額(路線価)
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国税庁が公表する「路線価」または「倍率方式」によって算定。
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毎年見直されており、地価の変動を比較的正確に反映。
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相続税の申告実務でもよく使われるため、実務上、最も合意が得られやすい方法です。
3. 公的評価基準以外の評価方法
(1)不動産業者による査定
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不動産業者が提示する想定売却価格。
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無料で入手しやすい一方、客観性や公平性に疑問が残ることも。
(2)家事調停委員の専門意見
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裁判所の調停手続で、不動産鑑定士資格を持つ委員が意見を述べる制度。
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一定の専門性と客観性はあるが、現地調査を行わない点で精緻さに限界があります。
(3)私的鑑定
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当事者が不動産鑑定士に依頼して実施する鑑定。
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鑑定評価基準に従って行われれば、最も客観的で信頼性が高い方法といえます。
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タイトルが「鑑定書」ではなく「意見書」や「査定書」の場合は注意が必要です。
4. 不動産評価額に関する合意と裁判所の判断
(1)合意できる場合
評価額は法的に絶対的なものではなく、相続人間の合意で自由に決められます。例えば、公示価格と固定資産税評価額の中間を取る、といった柔軟な調整も可能です。
(2)合意できない場合の扱い(分割方法別)
・換価分割(売却して現金化)
評価額は問題にならず、売却金額を分け合う。
・現物分割(不動産を誰かが取得)
不動産同士の相対的な評価が分かればよく、必ずしも鑑定は不要です。
・代償分割(取得者が他の相続人に金銭を支払う)
不動産の絶対的な価値が必要となるため、鑑定が必要です。
5. 裁判所が行う不動産鑑定のポイント
(1)評価時点の選定
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通常、遺産分割時点の価格を基準に鑑定。
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寄与分・特別受益がある場合は、相続開始時と遺産分割時の両方の鑑定が必要です。
(2)前提条件の確認
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鑑定の精度は「前提条件」で左右されます。
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抵当権の有無
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建物や借地権の影響 など
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鑑定前に当事者と裁判所がしっかりすり合わせることが重要です。
6. 鑑定書の信用性を確認するには?
不動産鑑定士が作成する書面のうち、タイトルが「鑑定書」であれば鑑定評価基準に基づく信頼性の高い資料といえます。
一方、「査定書」「意見書」「評価書」と記載されている場合は、簡易的な内容であることが多く、信用性が相対的に低い可能性があるため注意が必要です。
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