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『令和8年11月の土曜相談日』のお知らせ

2026-10-23

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。

令和8年11月の相談日は次の通りです。

① 11月14日(土)(担当弁護士:三塚)

② 11月28日(土)(担当弁護士:髙橋)

お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。

相談場所は、原則として五橋本店となります。

(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)

また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。

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コラム「亡くなった家族の『デジタル遺産』はどう相続する?調査方法と注意点を弁護士が解説」

2026-10-09

はじめに

スマートフォンやインターネットサービスの普及により、亡くなった方の財産や契約が、通帳や紙の書類からは分からないケースが増えています。

例えば、次のようなものです。

  • インターネット銀行の預金
  • ネット証券の株式や投資信託
  • 暗号資産
  • 電子マネーや各種ポイント
  • ネットショップ等の売上金
  • クラウド上の写真や文書
  • SNS、メール、動画配信サービスのアカウント
  • 月額課金のサブスクリプション
  • オンラインゲーム内の有償アイテム

これらは一般に「デジタル遺産」や「デジタル遺品」と呼ばれていますが、法律上統一された定義があるわけではありません。

また、預金や暗号資産のように経済的価値を持つものと、SNSアカウントや写真データのように利用規約・プライバシーが問題になるものとでは、取扱いが異なります。

本記事では、デジタル遺産の調査方法、相続手続、相続税申告との関係、相続人が注意すべき点について解説します。

1 デジタル遺産とは

国民生活センターは、デジタル遺品について、故人がインターネット上に保有していた資産のデータや、契約していたサブスクリプションのアカウントなどが含まれるものとして紹介しています。kokusen.go.jp

デジタル遺産は、大きく次の3種類に分けて考えると分かりやすいでしょう。

(1)経済的価値があるもの

  • インターネット銀行の預金
  • ネット証券の株式、投資信託、債券
  • FX取引口座
  • 暗号資産
  • 電子マネーの残高
  • ネットショップやフリマサービスの売上金
  • アフィリエイト報酬
  • 有償ポイント
  • オンライン上の著作物から生じる収益

これらは、原則として相続財産に含まれる可能性があります。

ただし、ポイントやゲーム内アイテムなどは、利用規約上、相続や第三者への移転が認められていないこともあります。

(2)契約上の地位や継続課金

  • 動画・音楽配信サービス
  • 電子書籍サービス
  • オンラインストレージ
  • セキュリティソフト
  • 有料メールサービス
  • レンタルサーバー、ドメイン
  • 各種アプリの月額課金

これらは、相続財産としての価値があるとは限りませんが、解約しなければ料金の請求が続く可能性があります。

(3)写真、メール、SNSなどのデータ

  • スマートフォン内の写真や動画
  • クラウド上の写真・文書
  • 電子メール
  • SNSの投稿やメッセージ
  • ブログ
  • 動画投稿サイトのアカウント
  • パソコン内のデータ

これらについては、データの内容、著作権、プライバシー、サービスの利用規約などを個別に確認する必要があります。

2 デジタル遺産は相続できるのか

デジタル形式で管理されているというだけで、相続財産から除外されるわけではありません。

例えば、インターネット銀行の預金は、紙の通帳が発行されていなくても預金債権です。ネット証券で保有する株式や投資信託も、通常の金融資産と同様、相続手続の対象になります。

一方、SNSや動画配信サービスなどのアカウントは、利用者本人だけに認められた契約上の地位であり、利用規約によって譲渡や承継が制限されていることがあります。

したがって、「IDとパスワードが分かれば相続人がそのまま利用できる」とは限りません。

デジタル遺産については、次の点を分けて確認する必要があります。

  • 財産的価値があるか
  • 相続の対象となる権利か
  • サービスの利用規約上、承継が認められるか
  • データの閲覧や取得が認められるか
  • 解約や返金が可能か

3 デジタル遺産を調査する方法

デジタル遺産は、現物が見えにくいことが大きな特徴です。相続人が存在に気付かなければ、遺産分割や相続税申告から漏れるおそれがあります。

(1)郵便物やメールを確認する

金融機関やサービス事業者から、取引報告書、残高のお知らせ、契約更新、請求などの通知が届いていないか確認します。

もっとも、故人のメールに無断でログインする行為は、利用規約やプライバシーとの関係で問題になる可能性があります。まずは端末の状況や事業者の相続手続を確認することが安全です。

(2)預金口座やクレジットカードの明細を確認する

通帳、銀行口座、クレジットカードの利用明細には、次の手掛かりが残っていることがあります。

  • 証券会社や暗号資産交換業者への入出金
  • サブスクリプション料金
  • クラウドサービスの利用料
  • アプリストアへの継続的な支払い
  • サーバーやドメインの利用料

少額の定期的な支払いであっても、放置すると請求が継続する可能性があります。

(3)スマートフォンやパソコンを確認する

端末に入っているアプリ、ブックマーク、デスクトップ上のショートカットなどから、利用していたサービスが分かる場合があります。

ただし、端末を初期化したり、パスワードを何度も誤入力したりすると、データが消去・ロックされる可能性があります。重要なデータがあると考えられる場合は、むやみに操作しないことが大切です。

(4)確定申告書などを確認する

故人が確定申告をしていた場合、申告書やその添付資料から、株式取引、暗号資産取引、ネット上の事業収入などが判明することがあります。

個人事業主の場合には、ウェブサイト、ネットショップ、クラウド会計、オンライン広告など、事業継続に必要なアカウントも確認する必要があります。

(5)取引事業者へ照会する

利用していた事業者が判明した場合は、死亡の事実と相続人であることを示す書類を準備し、相続手続を問い合わせます。

一般的には、次のような書類を求められることがあります。

  • 被相続人の死亡が分かる戸籍
  • 相続人であることが分かる戸籍
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 相続人の本人確認書類
  • 印鑑証明書

必要書類や手続は事業者によって異なります。

4 暗号資産の相続で特に注意すべき点

暗号資産は財産的価値を持つため、相続財産となり、相続税の課税対象にもなります。

国税庁は、相続や贈与によって取得した暗号資産について、財産評価基本通達に評価方法の直接の定めがないため、評価方法の定めのない財産として、同通達に定める評価方法に準じて評価するとしています。活発な市場がある暗号資産については、原則として、利用する暗号資産交換業者が公表する相続開始時の取引価格などを基に評価します。nta.go.jp

取引所で管理されている場合

国内の暗号資産交換業者を利用している場合は、その事業者へ相続手続を問い合わせます。

故人のIDやパスワードを使って相続人が売却・送金するのではなく、事業者所定の手続によることが原則です。

個人のウォレットで管理されている場合

個人のウォレットで暗号資産を管理している場合、秘密鍵や復元用フレーズが分からなければ、資産を技術的に移転できない可能性があります。

暗号資産の存在を把握して相続税を申告しなければならない一方、秘密鍵が分からず実際には処分できないという問題も生じ得ます。

秘密鍵や復元用フレーズは、他人に知られると資産を移転される危険があるため、電子メールなどで安易に送信せず、厳重に管理する必要があります。

5 デジタル遺産が遺産分割から漏れた場合

遺産分割協議が成立した後に、新たなネット銀行口座や暗号資産が見つかることがあります。

この場合、既に成立した遺産分割協議が当然にすべて無効になるわけではありません。新たに見つかった財産について、相続人間で追加の遺産分割協議を行う方法が一般的です。

もっとも、新たに見つかった財産が非常に高額であり、その存在を知っていれば当初の分割内容に同意しなかったと考えられる場合や、相続人の一人が意図的に財産を隠していた場合には、当初の協議の効力や損害賠償責任が問題になる可能性があります。

遺産分割協議書には、後から判明した財産の取得者を定める条項を入れることもありますが、財産の価値や相続税への影響によっては、改めて相続人間で調整する必要があります。

6 相続税申告から漏れないように注意する

デジタル遺産であっても、経済的価値があり、相続税法上の財産に当たれば、相続税の課税対象となります。

相続税における財産の価額は、原則として相続開始時の時価によって評価されます。nta.go.jp

特に暗号資産は価格変動が大きいため、現在の価格ではなく、相続開始時点の価額を確認しなければなりません。

デジタル遺産が申告後に判明し、課税遺産総額や税額が増加する場合には、修正申告や追加納税が必要になる可能性があります。

相続税の申告期限は、原則として、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。デジタル遺産の調査に時間がかかることもあるため、早めに着手することが重要です。

7 故人のID・パスワードを使ってもよいのか

相続人であっても、故人のIDやパスワードを使って自由にアカウントへログインできるとは限りません。

利用規約で本人以外の利用を禁止している場合もあり、アクセスの方法や目的によっては法的問題が生じる可能性があります。

特に、次の行為は慎重に判断する必要があります。

  • 故人の名義で取引する
  • 暗号資産や売上金を自分の口座へ移す
  • 故人としてメッセージを送信する
  • メールや非公開メッセージを広範囲に閲覧する
  • 他の相続人に知らせずアカウントを解約する
  • 写真や文書を削除する

まず、サービス事業者へ死亡後の手続を問い合わせ、必要に応じて相続人間で協議することが適切です。

8 有料サービスを放置しない

デジタル遺産の問題は、財産を受け取る場面だけではありません。

故人が利用していたサブスクリプションを把握できず、死亡後も料金が引き落とされ続けることがあります。国民生活センターも、故人が契約していたサブスクリプションの解約にID・パスワードを求められ、遺族が困った事例を紹介しています。kokusen.go.jp

預金口座やクレジットカードを解約しただけでは、契約そのものが終了せず、未払料金が発生する可能性もあります。

利用していたサービスを特定し、各事業者の規定に従って解約手続を行う必要があります。

9 デジタル遺産を残す側ができる対策

家族が困らないようにするためには、生前から「デジタル終活」を行うことが有効です。

利用サービスの一覧を作る

次の項目を整理しておきます。

  • 金融機関・証券会社・暗号資産交換業者の名称
  • 有料サービスの名称
  • スマートフォンやパソコンの種類
  • 重要なデータの保存場所
  • 事業用アカウント
  • 解約してほしいサービス
  • 写真やSNSを残すか削除するか

パスワードを安全に管理する

一覧表にパスワードを直接記載し、誰でも見られる場所に置くことは危険です。

パスワード管理アプリ、施錠できる場所、信頼できる専門家への情報保管などを検討し、家族には「必要な情報がどこにあるか」が分かるようにしておくとよいでしょう。

遺言書との役割を分ける

遺言書には、誰にどの財産を取得させるかを記載できます。

しかし、遺言書に変更の多いパスワードを直接記載することは、更新や情報管理の面で適切とは限りません。

財産の承継は遺言書、アカウント一覧や取扱いの希望は別の文書として管理する方法が考えられます。

10 よくある質問

Q1 スマートフォンのロックを解除できなければ、相続手続はできませんか

必ずしもスマートフォンのロック解除が必要とは限りません。

利用していた銀行、証券会社、暗号資産交換業者などが分かれば、相続関係書類を提出して、各事業者の相続手続を進められることがあります。

まず、郵便物、預金通帳、クレジットカード明細、確定申告書などから利用事業者を調査します。

Q2 ネット銀行の預金も遺産分割の対象ですか

ネット銀行の預金も、通常の銀行預金と同様に相続財産となります。

紙の通帳がなくても、口座がなくなるわけではありません。銀行所定の相続手続を行います。

Q3 電子マネーやポイントも相続できますか

サービスの利用規約によって異なります。

残高の払戻しや承継が認められるものもあれば、利用者の死亡によって資格やポイントが失効するものもあります。各事業者の規約や手続を確認する必要があります。

Q4 暗号資産を相続したことを申告しなければなりませんか

暗号資産は相続税の課税対象となる財産です。

暗号資産を売却していない場合や、相続人がまだ換金できていない場合でも、原則として相続開始時の価額を相続財産に含めて検討する必要があります。

Q5 故人のSNSは家族が引き継げますか

サービスによって異なります。

追悼アカウントへ移行できる場合、遺族から削除を申請できる場合、原則として第三者への承継を認めない場合などがあります。利用規約と事業者所定の手続を確認してください。

Q6 他の相続人に知らせずデジタル資産を移してもよいですか

遺産分割前に、相続人の一人が暗号資産や売上金を自分の口座へ移すことは、他の相続人との紛争につながります。

財産を発見した場合は、その内容と評価額を相続人間で共有し、遺産分割協議の対象とすることが重要です。

まとめ

デジタル遺産には、ネット銀行、ネット証券、暗号資産などの財産だけでなく、サブスクリプション、写真、メール、SNSなども含まれます。

対応のポイントは次のとおりです。

  • 郵便物、カード明細、確定申告書などから利用サービスを調査する
  • ID・パスワードで安易にログインせず、事業者の相続手続を確認する
  • 暗号資産など経済的価値のあるものは遺産分割に含める
  • サブスクリプションの解約漏れを確認する
  • 相続税申告からデジタル資産を漏らさない
  • 生前からアカウント一覧や取扱いの希望を整理する

デジタル遺産は発見しにくく、サービスごとに手続も異なります。調査に時間がかかる間に相続税の申告期限が迫ることもあります。

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、仙台・宮城を中心に、遺産調査、遺産分割、遺言書作成、相続人間の紛争など、相続に関するご相談をお受けしています。

当事務所は税理士事務所を併設し、代表弁護士が税理士でもあるため、遺産分割と相続税申告の双方を踏まえた対応が可能です。

「ネット上の財産があるようだが内容が分からない」「暗号資産が見つかった」「遺産分割後にデジタル資産が判明した」といった場合には、早めに当事務所へご相談ください。

※本記事は2026年10月時点の法令・公表資料に基づく一般的な説明です。サービスごとの手続や利用規約は変更されることがあります。

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『令和8年10月の土曜相談日』のお知らせ

2026-09-25

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。

令和8年10月の相談日は次の通りです。

① 10月17日(土)(担当弁護士:髙橋)

② 10月31日(土)(担当弁護士:三塚)

お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。

相談場所は、原則として五橋本店となります。

(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)

また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。

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コラム「相続人が遺産を使い込んだ場合、取り戻せる?調査方法と返還請求を弁護士が解説」

2026-09-25

はじめに

遺産分割のご相談では、次のような問題が少なくありません。

  • 親と同居していた相続人が、親の預金を繰り返し引き出していた
  • 相続開始後、相続人の一人が預金口座から多額の現金を引き出した
  • 葬儀費用として引き出したと言っているが、使途が明らかになっていない
  • 被相続人の通帳や印鑑を管理していた相続人が、取引履歴を開示しない
  • 被相続人の不動産を売却した代金が、相続人の一人の口座へ入金されている
  • 遺産である賃貸不動産の賃料を、一部の相続人が受け取り続けている

このようなケースでは、使い込まれた金銭を取り戻せる可能性があります。

もっとも、預金の引出しが被相続人の生前に行われたのか、相続開始後に行われたのかによって、法律上の扱いや手続が異なります。また、預金が引き出されているからといって、直ちに「使い込み」と認められるわけでもありません。

本記事では、相続人による遺産の使い込みが疑われる場合の調査方法、返還請求の方法、遺産分割での扱いなどについて解説します。

1 遺産の「使い込み」とは

一般に「遺産の使い込み」とは、相続人などが、被相続人の財産を正当な権限なく引き出し、自分のために使用したり、隠したりすることをいいます。

典型的なのは、被相続人の預貯金の無断引出しです。

しかし、問題になる財産は預貯金だけではありません。例えば、次のような行為も問題になることがあります。

  • 被相続人の預貯金を無断で引き出す
  • 被相続人名義のクレジットカードを私的に利用する
  • 被相続人の株式や投資信託を無断で売却する
  • 被相続人の不動産を無断で売却する
  • 不動産の売却代金を自分の口座へ移す
  • 被相続人が受け取るべき賃料を自分で受け取る
  • 生命保険の解約返戻金を取得する
  • 被相続人の財産を不当に低い価格で取得する
  • 相続開始後に遺産を処分し、代金を分配しない

もっとも、被相続人のために支出された医療費、介護費、施設費、生活費などは、通常、使い込みには当たりません。

問題になるのは、被相続人の意思や利益に反して財産が使用され、その使途について合理的な説明ができない場合です。

2 最初に確認すべきは「いつ」使われたか

遺産の使い込みを検討する場合、最初に確認すべきなのは、財産が処分された時期です。

大きく分けると、次の2つがあります。

  1. 被相続人が亡くなる前の引出し・処分
  2. 被相続人が亡くなった後の引出し・処分

この違いによって、誰の権利が侵害されたのか、どのような請求ができるのかが変わります。

3 被相続人の生前に預金が引き出されていた場合

(1)本人のための支出かを確認する

被相続人の生前に預金が引き出されていた場合、まず、そのお金が何に使われたのかを確認します。

例えば、次のような支出であれば、金額が相当であり、実際に支払われたことが確認できる限り、使い込みとは評価されないことがあります。

  • 医療費や薬代
  • 介護施設の利用料
  • 介護用品の購入費
  • 被相続人の生活費
  • 自宅の修繕費
  • 税金や公共料金
  • 被相続人の希望に基づく旅行や買い物
  • 葬儀や納骨の準備費用

同居していた相続人が、被相続人の依頼を受けて預金を引き出し、本人の生活費に充てていたのであれば、通常は返還義務を負いません。

したがって、預金の引出額だけでなく、被相続人の生活状況、健康状態、介護の必要性、通常の生活費なども含めて検討する必要があります。

(2)被相続人の承諾があったか

引き出した相続人が自分のために金銭を使っていたとしても、被相続人が贈与する意思を持って渡していたのであれば、直ちに使い込みとはいえません。

もっとも、贈与であったというためには、被相続人に贈与する意思があり、相続人も贈与として受け取ったことが必要です。

多額の現金が引き出されているにもかかわらず、贈与契約書やメモがなく、被相続人が重度の認知症で財産の内容を理解できない状態だった場合には、贈与の成立や有効性が争われることがあります。

(3)無断で引き出した場合

相続人が、被相続人の承諾を得ずに預金を引き出して自分のために使用していた場合、被相続人は、その相続人に対して不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権を有する可能性があります。

被相続人が亡くなると、これらの権利は相続の対象になります。

そのため、他の相続人は、原則として、自らが相続した割合に応じて、使い込んだ相続人に対する返還請求を検討することになります。

ただし、引出しの事実や無断使用について争いがある場合、家庭裁判所の遺産分割手続だけでは解決できず、地方裁判所または簡易裁判所に返還請求訴訟を提起しなければならないことがあります。

4 相続開始後に遺産が使い込まれた場合

被相続人が亡くなった時点で残っていた預貯金などは、遺産分割の対象になります。

相続人の一人が、遺産分割をしないまま預金を引き出し、自分のために使用した場合、他の相続人は、不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求を検討できます。

また、相続開始後に相続人の一人が遺産を処分した場合には、民法906条の2により、一定の条件の下で、処分された財産が遺産分割時にも存在するものとみなして遺産分割を行うことができます。

原則として共同相続人全員の同意が必要ですが、遺産を処分した相続人については、その同意を得る必要はありません。

例えば、相続開始時に3000万円の預金があったところ、相続人の一人が1000万円を引き出して取得した場合、残りの2000万円だけを分割すると、引き出した相続人が結果的に有利になってしまいます。

このような場合に、引き出された1000万円も遺産に含まれるものとして計算し、遺産分割の公平を図ることが考えられます。

ただし、誰が処分したのか、その金額はいくらか、何のために使ったのかなどについて争いがある場合には、別途、民事訴訟による解決が必要になることがあります。

5 相続人による引出しがすべて使い込みになるわけではない

預金の引出しが確認されたとしても、それだけで不正な使い込みが認められるわけではありません。

引き出した相続人からは、次のような説明がされることがあります。

  • 被相続人本人へ現金を渡した
  • 被相続人の生活費として使用した
  • 入院費や介護費を支払った
  • 被相続人から生前贈与を受けた
  • 他の相続人も承諾していた
  • 葬儀費用や納骨費用を支払った
  • 被相続人に代わって立て替えていた費用の精算を受けた
  • 被相続人から財産管理を任され、必要な支払いを行った

最終的には、引出しの時期や金額、被相続人の判断能力、生活状況、領収書の有無、引出し後の資金の流れなどから、説明が合理的かどうかを判断します。

特に、毎月の生活費として説明するには不自然な高額の引出しや、死亡直前の集中的な引出しについては、詳しい調査が必要です。

6 使い込みを調べるために必要な資料

(1)預貯金の取引履歴

最も重要な資料は、金融機関の取引履歴です。

通帳が手元になくても、相続人であることを示す戸籍謄本等を提出することにより、金融機関から被相続人名義の口座の取引履歴を取り寄せられる場合があります。

金融機関によって、開示できる期間、必要書類、手数料などが異なります。

取引履歴では、次のような点を確認します。

  • 高額な現金の引出し
  • ATMでの連続した引出し
  • 特定の相続人への振込み
  • 証券会社や保険会社への送金
  • 定期預金の解約
  • 被相続人が入院・入所した後の取引
  • 被相続人の死亡直前・直後の取引

(2)払戻請求書やATMの記録

金融機関の窓口で預金が払い戻されている場合には、払戻請求書、委任状、本人確認資料などが残っていることがあります。

これらを確認することにより、誰が窓口で手続をしたのか、筆跡が誰のものかなどが分かる場合があります。

ATMから引き出されている場合には、利用場所や利用時刻が分かることがあります。被相続人が入院中で外出できなかった時期に、遠方のATMで引き出されているような場合には、本人以外が操作した可能性を検討できます。

ただし、資料には保存期間があるため、早めに照会することが重要です。

(3)医療・介護関係の資料

被相続人の判断能力が争点になる場合には、次のような資料が重要です。

  • 診療録
  • 看護記録
  • 介護記録
  • 要介護認定に関する資料
  • 認知機能検査の結果
  • 成年後見開始の申立資料
  • 入院・施設入所の記録

認知症であったというだけで、すべての行為が無効になるわけではありません。問題となる取引や贈与が行われた時点で、被相続人にその内容や結果を理解する能力があったかを個別に検討します。

(4)領収書や家計簿

引き出した相続人が「本人のために使った」と説明する場合には、領収書、請求書、家計簿、介護費用の明細などを確認します。

すべての生活費について領収書が残っているとは限りませんが、引出額と被相続人の生活状況が大きくかけ離れていないかを検討する必要があります。

(5)電子メールやメッセージ

相続人間の電子メール、LINEなどのメッセージに、預金の管理や贈与についてのやり取りが残っていることがあります。

重要なメッセージは、相手方が送信を取り消したり、端末の故障によって失われたりする前に、前後のやり取りを含めて保存しておくことが大切です。

7 使い込まれた遺産を取り戻す方法

(1)相続人同士で説明と資料開示を求める

まず、預金を管理していた相続人に対し、取引履歴や領収書を示しながら、引出しの理由と使途について説明を求めます。

この段階で使途が明らかになり、相続人間で合意できれば、使い込まれた金額をその相続人の取得分から差し引くなどして解決できる場合があります。

ただし、口頭だけで話合いをすると、後になって説明内容が変わることがあります。質問事項や回答内容は、できる限り書面などの記録に残すことが重要です。

(2)遺産分割協議で調整する

相続人全員が合意する場合には、使い込みが疑われる金額を考慮して遺産分割を行うことができます。

例えば、遺産を使った相続人の取得分を減らし、他の相続人の取得分を増やす方法です。

もっとも、相手方が使い込み自体を否定している場合には、遺産分割協議だけでの解決は難しくなります。

(3)遺産分割調停を申し立てる

話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることが考えられます。

調停では、調停委員を介して、遺産の範囲や分け方について話し合います。

相続開始後に処分された遺産については、民法906条の2によって遺産分割の中で処理できる場合があります。

一方、生前の預金引出しについて、相手方が無断使用を否定している場合には、その返還請求は遺産分割とは別の民事訴訟で解決しなければならないことがあります。

(4)不当利得返還請求をする

法律上の原因なく被相続人や他の相続人の財産を取得した者に対しては、不当利得返還請求を行うことが考えられます。

例えば、被相続人に無断で預金を引き出し、自分の借金返済や生活費に使っていた場合などです。

(5)不法行為に基づく損害賠償を請求する

故意または過失によって被相続人や他の相続人の権利を侵害した場合には、不法行為に基づく損害賠償請求を検討できます。

不当利得返還請求と不法行為に基づく請求のいずれを選択するかは、事実関係、立証可能性、消滅時効などを踏まえて判断します。

(6)仮差押えを検討する

使い込んだ相続人が財産を隠したり処分したりするおそれがある場合には、訴訟を起こす前または訴訟中に、預金や不動産などの仮差押えを検討することがあります。

裁判に勝っても、相手方に財産が残っていなければ、実際に回収できない可能性があるためです。

仮差押えには、保全の必要性を示す資料や、裁判所が定める担保金が必要になるのが一般的です。

8 返還請求には消滅時効がある

遺産の使い込みに対する返還請求は、いつまでも行えるわけではありません。

不当利得返還請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権には、それぞれ消滅時効があります。

いつから時効期間が進行するか、どの時効期間が適用されるかは、引出しの時期、使い込みを知った時期、請求の法的構成、改正民法の経過措置などによって異なります。

また、使い込みをした相続人に請求書を送っただけでは、時効の完成を確実に防げない場合があります。

古い引出しが問題になるときは、「まだ相続の話合い中だから大丈夫」と考えず、早期に弁護士へ相談することが重要です。

9 相続放棄をした人が使い込んでいた場合

相続放棄をした人は、法律上、初めから相続人ではなかったものとみなされます。

しかし、相続放棄をすれば、それ以前に行った財産の使い込みについて責任を負わなくなるわけではありません。

被相続人の預金を無断で取得していた場合には、相続放棄をした後であっても、不当利得返還請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。

また、被相続人の死亡後に遺産を自分のために費消した場合には、その行為の内容によって、相続放棄の効力や単純承認との関係が問題になることもあります。

10 使い込みと特別受益の違い

被相続人の生前に相続人が財産を受け取っていた場合でも、それが常に違法な使い込みになるわけではありません。

被相続人の意思に基づく贈与であれば、その財産を返還する義務は原則としてありません。ただし、その贈与が婚姻、養子縁組、生計の資本のための贈与に当たる場合には、「特別受益」として遺産分割の際に考慮されることがあります。

つまり、次のように区別する必要があります。

  • 被相続人に無断で取得した場合
    不当利得返還請求や損害賠償請求の問題
  • 被相続人の有効な意思に基づいて贈与された場合
    特別受益として遺産分割で考慮するかという問題
  • 被相続人の判断能力がなく、贈与が無効である場合
    財産の返還請求の問題

「多額のお金を受け取っている」という事実だけでは、使い込みか、贈与か、特別受益かを判断できません。

11 使い込みが相続税申告に影響することもある

被相続人の預金が生前または相続開始後に引き出されていたとしても、本来は被相続人の財産または相続財産として相続税の課税対象になる場合があります。

相続人の一人が財産を隠していたため、当初の相続税申告から漏れていた場合には、修正申告や追加納税が必要になる可能性があります。延滞税や加算税が問題になることもあります。

一方、生前贈与として扱われる場合には、贈与税や相続税の生前贈与加算との関係を検討しなければなりません。

遺産の使い込みが疑われるケースでは、遺産分割や返還請求だけでなく、相続税申告への影響も併せて確認することが重要です。

12 よくある質問

Q1 通帳を持っている相続人が見せてくれません。調査できますか

通帳がなくても、相続人であることを証明する戸籍謄本等を提出することにより、金融機関から被相続人名義の口座の残高証明書や取引履歴を取得できる場合があります。

必要書類や開示可能な期間は金融機関によって異なるため、各金融機関への確認が必要です。

Q2 10年以上前の引出しも調べられますか

金融機関に取引記録が残っていれば調査できる可能性がありますが、保存期間を経過して資料が廃棄されていることもあります。

また、返還請求権の消滅時効も問題になります。古い引出しについては、できるだけ早く調査を始める必要があります。

Q3 相手方が「親からもらった」と主張しています

被相続人から贈与を受けたと主張する場合には、贈与が実際にあったのか、被相続人に贈与する意思と判断能力があったのかを検討します。

贈与契約書の有無だけでなく、引出し当時の被相続人の健康状態、医療記録、金額、資金の使途、他の相続人への説明などが判断材料になります。

有効な贈与であった場合でも、特別受益として遺産分割で考慮される可能性があります。

Q4 葬儀費用として引き出したと言われました

実際に葬儀費用などへ支出され、領収書や明細によって確認できる場合には、直ちに使い込みとはいえません。

ただし、引出額が実際の葬儀費用を大きく上回っている場合や、残金の使途が説明されない場合には、その差額について返還請求を検討することがあります。

なお、葬儀費用を最終的に誰が負担するかは、遺産分割とは別の問題となる場合があります。

Q5 警察に被害届を出せば解決しますか

相続人間の預金引出しについては、民事上の紛争として扱われ、警察が直ちに捜査を開始するとは限りません。

また、親族間の財産犯罪については、犯罪の種類や親族関係によって刑法上の特例が問題になることもあります。

財産を取り戻すことが目的であれば、取引履歴などの証拠を収集し、民事上の返還請求を検討することが基本になります。

Q6 使い込んだ金額を、その相続人の相続分から差し引けますか

相続人全員が合意すれば、その金額を考慮して遺産分割を行うことができます。

相続開始後に処分された遺産については、民法906条の2により、一定の条件の下で遺産分割の対象として扱える場合があります。

一方、生前の引出しについて相手方が使い込みを否定している場合には、当然に相続分から差し引けるとは限らず、別途、返還請求訴訟が必要になることがあります。

13 使い込みを疑ったときにしてはいけないこと

使い込みを疑ったとしても、相手方の自宅へ無断で立ち入ったり、スマートフォンや電子メールを勝手に閲覧したりすることは避けなければなりません。

違法な方法で証拠を集めると、別の紛争が生じるおそれがあります。

また、十分な証拠がない段階で、親族や第三者に対して「遺産を盗んだ」などと断定的に伝えると、名誉毀損等の問題になる可能性もあります。

まずは、金融機関の取引履歴など、適法に取得できる客観的資料を集めることが重要です。

まとめ

相続人による遺産の使い込みが疑われる場合には、預金の引出しが行われた時期、金額、使途、被相続人の承諾や判断能力などを確認する必要があります。

特に重要なのは、次の点です。

  • 生前の引出しか、相続開始後の引出しかを区別する
  • 金融機関から取引履歴を早めに取得する
  • 医療・介護記録、領収書、メッセージなどを保全する
  • 使い込みか、生前贈与・特別受益かを区別する
  • 遺産分割で処理できるか、別途訴訟が必要かを判断する
  • 消滅時効や相手方の財産処分に注意する
  • 相続税申告への影響も確認する

使い込みが疑われるケースでは、時間が経過するほど、金融機関の資料が廃棄されたり、関係者の記憶が薄れたりして、立証が難しくなることがあります。

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、仙台・宮城を中心に、遺産分割、預貯金の使い込み、生前贈与、特別受益、遺留分など、相続に関するご相談をお受けしています。

当事務所には税理士事務所も併設されているため、遺産分割や返還請求だけでなく、相続税申告への影響も含めて検討することが可能です。

「相続人が通帳を開示してくれない」「死亡前後に多額の預金が引き出されている」「贈与だったと言われているが納得できない」といった場合には、早めに当事務所へご相談ください。

※本記事は令和8年(2026年)9月時点の法令に基づく一般的な説明です。個別の事案では、引出しの時期、相続開始時期、証拠、当事者の関係、消滅時効などによって適切な対応が異なります。

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コラム「民事裁判がオンライン化されました―訴訟手続はどう変わった?弁護士がわかりやすく解説」

2026-09-11

はじめに

令和8年(2026年)5月21日、改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則が全面施行され、民事訴訟の手続が大きく変わりました。

これまで、裁判所への訴状や準備書面の提出、判決書などの受領、訴訟記録の閲覧は、紙の書面を中心に行われてきました。

今回の改正により、裁判所の「民事裁判書類電子提出システム(mints・ミンツ)」を利用して、訴えの提起や裁判書類の提出・受領などをオンラインで行えるようになりました。

もっとも、「すべての裁判がインターネットだけで完結する」「裁判所へ行く必要が一切なくなる」というわけではありません。また、民事執行、破産、労働審判、離婚などの家事事件は、現時点では今回のオンライン化の対象外です。

本記事では、民事裁判のオンライン化によって何が変わったのか、利用する際にどのような点に注意すべきかについて、弁護士がわかりやすく解説します。

1 民事裁判のオンライン化とは

令和8年5月21日に施行された改正民事訴訟法では、民事訴訟手続について、主に次のようなデジタル化が行われました。

  • 訴状や準備書面などのオンライン提出
  • 申立手数料などの電子納付
  • 判決書などのオンライン送達
  • 訴訟記録の電子化とオンライン閲覧
  • ウェブ会議による口頭弁論等
  • 電子データそのものを対象とする証拠調べ

裁判所への書類の提出や裁判所からの書類の受領には、原則として「mints」と呼ばれるシステムが使用されます。

mintsは、裁判所に対してインターネットで書類を提出したり、裁判所から書類を受け取ったりするためのシステムです。利用に当たっては、事前にアカウントを登録する必要があります。

2 訴状や準備書面をオンラインで提出できる

改正後は、mintsを利用して、オンラインで訴えを提起できるようになりました。

訴状だけでなく、訴訟が始まった後の準備書面、証拠説明書、書証の写しなども、原則としてオンラインで提出できます。

これにより、裁判所の窓口へ直接書類を持参したり、郵送したりする必要が少なくなります。提出期限が迫っている場合でも、一定の時間的負担を軽減できることが期待されます。

ただし、ファイル形式、ファイル容量、提出方法などについて、裁判所が定めるルールを守る必要があります。提出先となる事件を間違えたり、個人情報をマスキングしないままアップロードしたりすることがないよう、十分な注意が必要です。

3 本人は紙でも提出できる

民事裁判がオンライン化されたからといって、一般の方が必ずmintsを利用しなければならないわけではありません。

弁護士等ではない本人が訴訟を行う場合には、従来どおり、紙の訴状や書面を裁判所へ提出することもできます。

一方、当事者から委任を受けた弁護士などの訴訟代理人については、原則として、mintsを利用したオンライン提出が義務付けられています。

したがって、今回の改正によって、本人訴訟ができなくなったり、パソコンを使用できない方が裁判を利用できなくなったりするわけではありません。

4 申立手数料などの納付方法も変わった

これまで、訴えを提起する際の申立手数料は、原則として、訴状に収入印紙を貼って納付していました。また、裁判所が訴状や判決書などを郵送するための費用として、郵便切手をあらかじめ納付する必要がありました。

改正後は、申立手数料と郵便費用に相当する金額を合算し、原則としてペイジーを利用して納付します。

ペイジーによる納付は、インターネットバンキングや対応する金融機関のATMから行うことができます。

また、従来のように、裁判所ごとに異なる郵便切手の組合せを確認して準備する必要は基本的になくなりました。

なお、郵便費用に相当する金額は、書面で訴えを提起する場合とオンラインで提起する場合とで異なることがあります。具体的な手数料額については、訴えを提起する時点で最新の情報を確認する必要があります。

5 裁判所からの書類をオンラインで受け取れる

裁判所のシステムを利用してオンラインで送達を受ける旨を届け出た場合、判決書などの裁判書類をmints上で受け取ることができます。

裁判所書記官が裁判書類をシステムにアップロードすると、登録したメールアドレスに通知が届き、当事者はmintsにサインインして書類を閲覧またはダウンロードします。

注意しなければならないのは、「実際に書類を開かなければ送達されたことにならない」とは限らない点です。

オンライン送達の効力は、原則として、次のうち最も早い時点で生じます。

  1. システム上で裁判書類を閲覧した時
  2. 裁判書類をダウンロードした時
  3. 閲覧またはダウンロードが可能になった旨の通知が発せられた日から1週間が経過した時

メールを見落としたり、mintsへのログインを後回しにしたりしている間に、控訴期間などの重要な期間が進んでしまう可能性があります。

オンライン送達を利用する場合には、登録メールアドレスを定期的に確認するとともに、迷惑メールの設定や担当者不在時の確認体制を整えておく必要があります。

6 訴訟記録をオンラインで確認できる

令和8年5月21日以降に提起された民事訴訟については、訴状、準備書面、証拠、判決書などの訴訟記録が原則として電子化されます。

mintsを利用している当事者は、事件が裁判所に係属している間、基本的にシステム上で訴訟記録を閲覧し、ダウンロードできるようになります。

従来は、記録を詳しく確認するために裁判所へ出向かなければならない場合がありました。オンラインで確認できるようになったことで、当事者や代理人の負担が軽減されると考えられます。

もっとも、令和8年5月20日以前に訴えが提起された事件は、原則として従来どおり紙で記録が作成されるため、今回の制度によるオンライン閲覧の対象にはなりません。

7 裁判期日にウェブ会議で参加できる場合がある

改正後は、裁判所が相当と認める場合など、一定の条件の下で、当事者がウェブ会議を利用して口頭弁論等の期日に参加できるようになりました。

ウェブ会議には、原則としてMicrosoft Teamsが利用されます。参加するためには、インターネットに接続できるパソコン等のほか、カメラ、マイク、スピーカーなどが必要です。

遠方の裁判所に事件が係属している場合には、裁判所への移動時間や交通費を軽減できる可能性があります。

ただし、裁判期日へのウェブ参加が常に認められるわけではありません。事件の内容、手続の種類、証拠調べの必要性などを踏まえ、裁判所が実施方法を判断します。

また、一般の方が裁判を傍聴する場合は、オンラインで傍聴することはできず、これまでどおり裁判所の法廷へ行く必要があります。

8 電子メールや動画なども証拠として扱いやすくなる

現代の民事紛争では、電子メール、チャット、SNSの投稿、録音、写真、動画、電子契約書などのデジタルデータが重要な証拠になることが少なくありません。

改正民事訴訟法では、従来から行われていた紙の契約書等の証拠提出に加え、電磁的記録に保存された情報そのものを証拠調べの対象とする規定が設けられました。

証拠となるデータは、内容に応じて、PDF、MP4、MP3、JPEG、PNGなどの形式で提出します。所定の形式に変換できない場合には、記録媒体に保存して提出することがあります。

もっとも、電子データは、編集や改変が容易であるという特徴があります。

そのため、単に画面のスクリーンショットを保存するだけでなく、送受信日時、送信者、受信者、前後のやり取り、元のファイルなども含めて保存しておくことが重要です。

紛争が発生した場合には、必要なデータが消去されたり上書きされたりする前に、早い段階で証拠を保全する必要があります。

9 すべての裁判手続がオンライン化されたわけではない

今回オンライン化されたのは、主として通常の民事訴訟です。

令和8年5月21日の時点では、次のような手続は、今回の全面的なオンライン申立ての対象外とされています。

  • 民事執行
  • 破産・民事再生などの倒産手続
  • 労働審判
  • 民事調停などの非訟手続
  • 離婚訴訟などの人事訴訟
  • 遺産分割、離婚調停、成年後見などの家事事件

これらについては、遅くとも令和10年(2028年)6月までに、順次オンライン申立て等の対象となる予定です。

例えば、民事訴訟で勝訴判決を取得しても、その後に預金や給与、不動産を差し押さえる民事執行手続は、現時点では原則として書面で申し立てる必要があります。

「裁判がオンライン化されたから、強制執行までオンラインでできる」と誤解しないよう注意が必要です。

10 オンライン化されても裁判の難しさは変わらない

オンライン化によって、書類の提出や受領は便利になりました。

しかし、民事裁判で重要なのは、書類をどのような方法で提出するかだけではありません。

訴訟を行うためには、少なくとも次の点を検討する必要があります。

  • 誰に対して、どのような請求をするのか
  • どの裁判所に訴えを提起するのか
  • 請求の法的根拠は何か
  • どのような事実を主張する必要があるか
  • その事実を証明する証拠があるか
  • 相手方から予想される反論にどう対応するか
  • 訴訟前に仮差押えなどの保全処分が必要か
  • 勝訴後に相手方の財産から回収できるか
  • 和解する場合、どのような条件が妥当か

mintsを利用すれば、誰でもオンラインで訴状を提出できます。しかし、法的な主張が不十分であったり、必要な証拠がそろっていなかったりすれば、期待した結果を得られない可能性があります。

また、請求権には消滅時効があり、裁判所から届いた書類への対応にも期限があります。オンライン化されたからといって、手続上の期限が緩やかになるわけではありません。

11 訴えられた場合も放置してはいけない

相手方から民事裁判を起こされた場合、訴状とともに、答弁書の提出期限や第1回口頭弁論期日が記載された書類が届きます。

「相手の主張に納得できない」「請求内容が事実と違う」と思っていても、裁判所からの書類を放置してはいけません。

答弁書を提出せず、裁判期日にも出席しなければ、相手方の主張を争わないものとして扱われ、相手方の請求どおりの判決が言い渡される可能性があります。

オンラインで書類が届いた場合にも、紙の訴状が届いた場合と同様に、速やかな対応が必要です。

12 よくある質問

Q1 パソコンを持っていないと、民事裁判を起こせませんか

いいえ。弁護士等ではない本人が訴訟を行う場合には、従来どおり、紙の書面で訴えを提起することもできます。

オンライン申立てを利用しないことだけを理由として、裁判を受けられなくなるわけではありません。

Q2 自分でmintsを利用して訴訟を起こせますか

mintsは一般の方もアカウントを登録して利用できます。

ただし、mintsは書類を提出・受領するためのシステムであり、請求内容や法的主張が適切かどうかを判断してくれるものではありません。

請求額が大きい場合、事実関係が複雑な場合、相手方に弁護士が付いている場合などには、訴えを提起する前に弁護士へ相談することをおすすめします。

Q3 裁判所に一度も行かずに判決まで進められますか

事件の内容や裁判所の判断によっては、ウェブ会議を活用して手続を進められる場合があります。

もっとも、本人尋問や証人尋問を行う場合などには、裁判所への出頭が必要になることがあります。すべての事件が完全にオンラインだけで終了するわけではありません。

Q4 離婚調停や遺産分割調停もオンラインで申し立てられますか

令和8年5月21日時点では、離婚調停、遺産分割調停、成年後見などの家事事件は、今回のオンライン申立ての対象外です。

ただし、事件によっては、申立て後の期日にウェブ会議や電話会議を利用できる場合があります。具体的な進行については、担当する裁判所に確認する必要があります。

Q5 民事裁判のオンライン化によって、裁判は早くなりますか

書類の郵送や裁判所への移動に要する時間が減るため、事務処理の効率化は期待できます。

しかし、争点が多い事件、証拠が多数ある事件、証人尋問が必要な事件などでは、解決まで相応の期間を要します。オンライン化によって、すべての民事裁判が短期間で終わるわけではありません。

まとめ

令和8年5月21日から、民事訴訟では、訴状や準備書面のオンライン提出、手数料等の電子納付、裁判書類のオンライン送達、電子化された訴訟記録の閲覧などが可能になりました。

今回の改正は、裁判所への移動や書類の郵送に伴う負担を軽減し、民事裁判をより利用しやすくするものといえます。

一方で、電子送達を見落とした場合のリスク、提出先やファイルを間違えるリスク、個人情報や営業秘密を含む資料を誤って提出するリスクなど、デジタル化に伴う新たな注意点もあります。

また、オンライン化されたのは手続の方法であり、法的な主張・立証や訴訟戦略の難しさがなくなったわけではありません。

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、仙台・宮城を中心に、企業間の取引トラブル、売掛金等の債権回収、不動産問題、労働問題、損害賠償請求など、各種の民事事件についてご相談をお受けしています。

「訴訟を起こすべきか判断できない」「裁判所から訴状が届いた」「相手方との交渉が進まない」「判決を取っても回収できるか不安」といった場合には、できるだけ早い段階で当事務所へご相談ください。

※本記事は令和8年(2026年)9月時点の法令・公表資料に基づいて作成しています。個別の事件については、具体的な事情によって必要な手続や対応が異なります。

【参考資料】

コラム「住所・氏名変更登記が義務化―不動産所有者が知っておくべき期限・手続・過料を弁護士が解説」

2026-09-04

1 はじめに

2026年(令和8年)4月1日から、不動産の所有者について、住所や氏名・名称に変更があった場合の変更登記が義務化されました。

これまでは、引っ越しや結婚などによって住所・氏名が変わっても、変更登記の申請期限や罰則はありませんでした。そのため、登記簿には以前の住所や氏名が記載されたままというケースも少なくありません。

しかし、現在は、原則として変更日から2年以内に住所等の変更登記を申請しなければなりません。正当な理由なく申請を怠った場合には、5万円以下の過料が科される可能性があります。

また、義務化前に住所や氏名が変わっていた場合も対象となります。

本稿では、住所・氏名変更登記の義務化について、誰が対象になるのか、いつまでに申請しなければならないのか、過去の変更を放置している場合はどうすればよいのか、登記を自動で変更してもらえる「スマート変更登記」とは何かについて解説します。

2 住所・氏名変更登記とは

土地や建物の登記簿には、所有者の氏名または名称と住所が記録されています。

その後、引っ越し、結婚、離婚、会社の本店移転、商号変更などによって登記簿上の情報に変更が生じた場合、現在の情報に改める手続が「所有権登記名義人の住所・氏名等の変更登記」です。

対象となるのは、例えば次のような場合です。

  • 自宅を購入した後に転居した
  • 不動産を所有したまま複数回引っ越した
  • 結婚や離婚、養子縁組などにより氏名が変わった
  • 住居表示の実施により住所の表示が変わった
  • 不動産を所有する会社が本店を移転した
  • 不動産を所有する会社が商号を変更した
  • 海外へ転居した
  • 海外から日本へ帰国した

住民票や戸籍、会社の商業登記を変更しただけで、不動産登記簿上の住所や氏名が必ず自動的に変更されるわけではありません。

ただし、後述する「スマート変更登記」を利用する場合などには、法務局による職権での変更登記を受けられる制度が設けられています。

3 誰が義務化の対象になるのか

対象となるのは、土地や建物について所有権の登記名義人となっている個人または法人です。

具体的には、次のような不動産が対象になります。

  • 自宅の土地・建物
  • マンション
  • アパートや貸家
  • 駐車場
  • 田畑や山林
  • 事業用地
  • 店舗・事務所・工場
  • 使用していない空き家や土地
  • 共有名義の不動産
  • 法人名義の不動産

現在、その不動産を使用しているかどうかは関係ありません。

共有不動産の場合には、住所や氏名が変わった共有者ごとに変更登記を行う必要があります。

一方、賃借人や抵当権者など、所有権の登記名義人ではない者については、今回の義務化の対象ではありません。

4 いつまでに登記しなければならないのか

(1)2026年4月1日以降に変更した場合

2026年4月1日以降に住所や氏名・名称が変わった場合には、その変更日から2年以内に変更登記を申請する必要があります。

例えば、2026年9月1日に住所を変更した場合、原則として2028年9月1日までに申請しなければなりません。

(2)2026年4月1日より前に変更している場合

義務化前に住所や氏名が変わっているにもかかわらず、変更登記をしていない場合も対象です。

この場合には、原則として2028年(令和10年)3月31日までに変更登記を申請する必要があります。

したがって、「昔の住所のままだが、変更したのは義務化前なので関係ない」ということにはなりません。

法務省も、義務化前の変更について経過措置の対象となることを明示しています。法務省「住所等変更登記の義務化について」

5 住所を何度も変更している場合はどうなるのか

不動産を取得した後、変更登記をしないまま複数回転居している場合には、登記簿上の住所から現在の住所までのつながりを証明する必要があります。

例えば、登記簿上の住所がA市、その後B市、C市へ転居し、現在はD市に住んでいる場合、A市からD市まで住所が連続して移転したことを確認できる資料が必要です。

一般的には、次のような書類を使用します。

  • 住民票の写し
  • 住民票の除票
  • 戸籍の附票
  • 戸籍の附票の除票
  • 住居表示実施証明書
  • 町名地番変更証明書

保存期間の経過などにより、古い住民票の除票や戸籍の附票を取得できない場合もあります。

その場合には、不在住証明書、不在籍証明書、不動産の権利証や登記識別情報、固定資産税の納税通知書など、別の資料を組み合わせて同一人物であることを説明しなければならないことがあります。

住所変更の回数が多い場合や、登記簿上の住所が非常に古い場合は、早めに必要書類を確認することが重要です。

6 氏名が変わっている場合に必要な手続

結婚、離婚、養子縁組などによって氏名が変わった場合には、氏名変更登記が必要です。

一般的には、変更前後の氏名のつながりを確認できる戸籍謄本や抄本などを用意します。

氏名と住所の両方が変わっている場合には、一つの申請で住所・氏名変更登記を行うこともできます。

ただし、複数回の氏名変更や転居がある場合には、戸籍や戸籍の附票などによって、登記簿上の人物と現在の申請人が同一であることを証明する必要があります。

7 登記申請はどこに、どのように行うのか

住所・氏名変更登記は、対象となる不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。

申請方法には、主に次の3つがあります。

  • 法務局の窓口へ提出する
  • 郵送で申請する
  • オンラインで申請する

複数の不動産を所有しており、管轄する法務局が異なる場合には、原則として、それぞれの管轄法務局への申請が必要です。

申請には、一般に次のような書類を使用します。

  • 登記申請書
  • 住所変更を証明する住民票や戸籍の附票など
  • 氏名変更を証明する戸籍謄本等
  • 法人の場合には会社法人等番号など
  • 委任して申請する場合には委任状

必要書類は、変更内容や住所移転の回数、法人・個人の別などによって異なります。

8 登録免許税はいくらかかるのか

住所・氏名変更登記の登録免許税は、原則として不動産1個につき1,000円です。

ここでいう「不動産1個」は、土地と建物を別々に数えます。

例えば、戸建住宅について土地1筆と建物1棟を所有している場合には、通常、土地と建物の合計2個となり、登録免許税は2,000円です。

敷地が複数の筆に分かれている場合や、マンションの敷地権化されていない土地を共有している場合などには、不動産の個数が増えることがあります。

なお、住居表示の実施や行政区画・町名地番の変更など、所有者の転居によらない住所表示の変更については、証明書を添付することで登録免許税が非課税となる場合があります。

9 申請を怠った場合はどうなるのか

正当な理由なく、期限内に住所・氏名変更登記を申請しなかった場合には、5万円以下の過料が科される可能性があります。

もっとも、期限を一日でも過ぎれば直ちに過料が科されるという仕組みではありません。

法務局が義務違反を把握した場合には、まず登記申請をするよう催告し、催告を受けても正当な理由なく申請しない場合に、裁判所へ通知する運用が想定されています。

また、次のような事情があるときは、「正当な理由」が認められる場合があります。

  • 重い病気などにより登記申請が困難である
  • DV被害などにより生命・身体に危害が及ぶおそれがある
  • 経済的に困窮しており、登記費用を負担する能力がない
  • 登記簿上の住所から現在の住所までの経緯を証明する資料の収集に時間を要する
  • 所有権の帰属などについて争いがあり、申請できない事情がある

ただし、「忙しかった」「制度を知らなかった」「登記するのを忘れていた」という理由だけで、当然に正当な理由が認められるとは限りません。

法務省の案内では、正当な理由なく義務に違反した場合、5万円以下の過料の対象となることが示されています。法務省「住所等変更登記の義務化特設ページ」

10 登記を放置することによる過料以外のリスク

住所・氏名変更登記を放置することには、過料以外にも次のようなリスクがあります。

  • 不動産を売却するときに、先に変更登記が必要になる
  • 住宅ローンの借換えや抵当権設定の手続が遅れる
  • 相続が発生したときに、相続人による資料収集が難しくなる
  • 古い住所から現在の住所までのつながりを証明できなくなる
  • 法務局や第三者からの通知が届かない
  • 所有者の確認が困難となり、不動産取引に支障が生じる
  • 法人の合併、解散、清算などの際に手続が複雑になる

特に、住所変更を長期間放置すると、住民票の除票や戸籍の附票の保存期間が経過し、必要な証明書を取得できなくなることがあります。

将来売却する予定がない不動産であっても、早めに登記簿の記載を確認しておくことをお勧めします。

11 「スマート変更登記」とは

住所・氏名変更登記の義務化に伴い、個人については、法務局が住民基本台帳ネットワークの情報を定期的に照会し、本人の了解を得たうえで、職権で住所等の変更登記を行う仕組みが始まっています。

これが、いわゆる「スマート変更登記」です。

個人がこの仕組みを利用するには、あらかじめ法務局に次のような「検索用情報」を申し出る必要があります。

  • 氏名
  • 氏名の振り仮名
  • 住所
  • 生年月日
  • メールアドレス

検索用情報の申出を行うと、法務局が住民基本台帳ネットワークを通じて住所等の変更を確認します。変更が確認された場合には、原則として本人に確認したうえで、法務局が職権で変更登記を行います。

自ら変更登記を申請しなくても義務を履行でき、職権登記について登録免許税もかからないというメリットがあります。

検索用情報の申出は、法務局の「かんたん登記申請」などを利用して、オンラインで行うことができます。法務省「スマート変更登記のご利用方法」

12 検索用情報の申出は誰でも必要なのか

2025年(令和7年)4月21日以降、個人が所有権の保存登記や移転登記などを申請する際には、原則として検索用情報も併せて申し出ることになっています。

これより前から不動産を所有している人も、検索用情報だけを申し出ることができます。

ただし、検索用情報を申し出ていないからといって、直ちに過料の対象になるわけではありません。義務となるのは、住所や氏名に変更があった場合の変更登記です。

検索用情報の申出は、将来の住所変更登記等の負担を減らすための制度と位置付けられます。

なお、メールアドレスを持っていない場合なども手続は可能ですが、法務局からの連絡方法が異なることがあります。

13 法人が所有する不動産はどうなるのか

会社や法人が不動産を所有している場合も、本店・主たる事務所の移転や名称変更があれば、住所・名称変更登記の義務化の対象になります。

もっとも、法人については、法務局が商業・法人登記の情報と不動産登記の情報を照合し、変更を確認した場合に職権で不動産の変更登記を行う仕組みがあります。

この仕組みを利用するには、不動産登記に会社法人等番号が記録されていることが必要です。記録されていない場合には、会社法人等番号の申出を検討する必要があります。

注意しなければならないのは、会社の本店移転登記を行えば、不動産登記簿も常に直ちに自動変更されるとは限らないことです。

会社が本店を移転した場合には、次の事項を確認することが重要です。

  • 商業・法人登記の本店移転登記が完了しているか
  • 所有不動産の登記簿に会社法人等番号が記録されているか
  • 不動産登記簿上の本店所在地が現在の所在地と一致しているか
  • 法務局による職権登記が行われているか

法務省は、会社法人等番号を利用して、法人の住所・名称変更を職権で不動産登記に反映する仕組みを案内しています。法務省「住所等変更登記の義務化」

14 相続登記の義務化とは別の制度

住所・氏名変更登記の義務化は、2024年(令和6年)4月1日に始まった相続登記の義務化とは別の制度です。

両者の違いは次のとおりです。

制度 義務が生じる主な場面 原則的な期限 過料
相続登記 相続により不動産を取得したことを知った場合 その日から3年以内 10万円以下
住所・氏名変更登記 所有者の住所・氏名等が変わった場合 変更日から2年以内 5万円以下

例えば、親から相続した土地について相続登記をした後、自分が転居した場合には、相続登記だけでなく、その後の住所変更登記も必要になります。

15 よくある質問

Q1 自宅の住所を変更すれば、不動産登記も自動で変わりますか

原則として、住民票の住所を変更しただけでは、不動産登記簿の住所は自動的には変更されません。

もっとも、検索用情報を申し出てスマート変更登記を利用している個人については、法務局による職権登記を受けられる場合があります。

Q2 義務化前に引っ越していますが、登記は必要ですか

必要です。

2026年4月1日より前に住所が変わり、変更登記をしていない場合には、原則として2028年3月31日までに登記する必要があります。

Q3 不動産を売却する予定がなくても必要ですか

必要です。

居住や利用の有無、売却予定の有無にかかわらず、所有権の登記名義人である限り対象になります。

Q4 住所変更登記は自分でもできますか

自分で申請することもできます。

ただし、複数回転居している、必要な住民票の除票が取得できない、氏名と住所の両方が変わっている、共有不動産や多数の不動産があるといった場合には、必要書類や申請内容が複雑になることがあります。

なお、登記申請の代理を業務として行う専門家は司法書士です。弁護士が受任中の事件に付随して登記手続を扱う場合などを除き、通常の登記申請のみを依頼する場合には司法書士への相談が一般的です。

Q5 住宅ローンが残っていても変更登記はできますか

できます。

住宅ローンや抵当権が設定されていても、所有者の住所・氏名変更登記を行うことは可能です。

金融機関にも住所・氏名変更の届出が必要となることがありますので、別途確認しましょう。

Q6 会社の本店移転登記を済ませれば何もしなくてよいですか

必ずしもそうとは限りません。

会社法人等番号が不動産登記に記録され、法務局が変更を確認できる状態になっているかを確認する必要があります。所有不動産の登記事項証明書を取得し、現在の本店所在地と一致しているかを確認するとよいでしょう。

16 今すぐ確認すべきチェックリスト

不動産を所有している個人・法人は、次の事項を確認してみましょう。

  • 所有している土地・建物をすべて把握しているか
  • 登記事項証明書の住所・氏名等が現在の情報と一致しているか
  • 過去に転居した後、変更登記をしているか
  • 結婚や離婚などによる氏名変更を登記に反映しているか
  • 複数回の住所変更を証明できる書類があるか
  • 共有不動産について各共有者の情報が正しいか
  • 相続した不動産の相続登記が済んでいるか
  • 検索用情報の申出をしているか
  • 法人所有の不動産に会社法人等番号が記録されているか
  • 2026年4月1日より前の変更について、2028年3月31日の期限を確認したか

所有不動産を正確に把握できていない場合には、2026年2月2日に始まった「所有不動産記録証明制度」の利用も考えられます。

17 まとめ

2026年4月1日から、不動産所有者の住所・氏名等の変更登記が義務化されました。

重要なポイントは、次のとおりです。

  • 住所や氏名等の変更日から2年以内に申請する
  • 義務化前の変更も対象となる
  • 義務化前の変更は、原則として2028年3月31日までに申請する
  • 正当な理由なく申請を怠ると、5万円以下の過料の可能性がある
  • 個人は検索用情報を申し出ることで、スマート変更登記を利用できる
  • 法人は不動産登記への会社法人等番号の記録状況を確認する
  • 相続登記の義務化とは別の制度である

長期間変更登記をしていない場合、古い住所から現在の住所までのつながりを証明する資料の収集が難しくなることがあります。

「いつか売却するときに対応すればよい」と考えず、まずは所有不動産の登記事項証明書を取得し、住所・氏名等が現在の情報と一致しているか確認することが大切です。

不動産・相続・法人に関するご相談は当事務所へ

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、仙台・宮城を中心に、不動産、相続、会社法務に関するご相談をお受けしています。

住所・氏名変更登記そのものに加え、次のような問題がある場合には、法的関係を含めた総合的な検討が必要です。

  • 相続した不動産の名義が先代のままになっている
  • 所有者や相続人の所在が分からない
  • 共有者の一部と連絡が取れない
  • 不動産の所有権や共有持分に争いがある
  • 売却や担保設定の前提として登記を整理したい
  • 会社の本店移転、組織再編、解散に伴い不動産の整理が必要になった
  • 不動産の処分に相続税、譲渡所得税その他の税務問題が関係する

当事務所には税理士事務所が併設されているため、相続不動産や法人所有不動産について、必要に応じて法務と税務の両面から検討することが可能です。

また、仙台の本店に加えて東京支店を設けており、宮城県内の不動産だけでなく、東京・首都圏にある不動産や、複数地域にまたがる相続・法人案件にも対応しています。

登記申請について司法書士による手続が必要な場合には、事案に応じて司法書士と連携しながら対応します。登記簿の住所や名義に問題がある場合には、期限直前まで放置せず、早めにご相談ください。

▶「結の杜総合法律事務所の総合サイト」はこちら

『令和8年9月の土曜相談日』のお知らせ

2026-08-17

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。

令和8年9月の相談日は次の通りです。

① 9月12日(土)(担当弁護士:三塚)

② 9月26日(土)(担当弁護士:髙橋)

お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。

相談場所は、原則として五橋本店となります。

(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)

また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。

皆様のご予約をお待ちしております。

コラム「【2026年開始】亡くなった親の不動産を調べる方法|所有不動産記録証明制度を弁護士が解説」

2026-08-07

親が亡くなって相続手続を始めようとしても、「親がどこに、どのような不動産を所有していたのか分からない」ということがあります。

自宅の土地・建物だけでなく、遠方の山林や農地、先代から相続した土地、わずかな共有持分などが残されていることも珍しくありません。

これまでは、固定資産税の納税通知書や市区町村の名寄帳などを手掛かりに、一つずつ不動産を調査する必要がありました。しかし、名寄帳は原則として市区町村ごとに取得しなければならず、相続人が把握していない地域にある不動産を発見することは容易ではありませんでした。

そこで、2026年(令和8年)2月2日から、新たに「所有不動産記録証明制度」が始まりました。

この制度を利用すると、亡くなった方が登記簿上の所有者として記録されている不動産を、全国の登記情報から一覧的に調べることができます。

本記事では、所有不動産記録証明制度の内容、請求できる人、手続方法、利用する際の注意点について、弁護士が解説します。

1 所有不動産記録証明制度とは

所有不動産記録証明制度とは、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、登記情報から検索し、一覧にした「所有不動産記録証明書」の交付を受けられる制度です。

例えば、父親が亡くなった場合、相続人が父親の氏名や住所などを検索条件として請求することで、父親名義で登記されている土地や建物を一覧的に確認できます。

所有不動産記録証明書には、主に次のような情報が記載されます。

  • 不動産番号
  • 土地の所在・地番
  • 建物の所在・家屋番号
  • 登記名義人の氏名・住所
  • 所有権の持分
  • 検索に使用した氏名・住所などの条件

これまでのように、不動産がありそうな市区町村を一つずつ推測して調査する必要がなくなるため、相続財産調査の負担を大きく軽減できる可能性があります。

2 なぜこの制度が作られたのか

所有不動産記録証明制度が設けられた背景には、相続した不動産が把握されないまま放置され、所有者不明土地が増加してきたという問題があります。

被相続人が複数の地域に不動産を所有している場合、相続人がそのすべてを把握できるとは限りません。

特に、次のような不動産は見落とされやすい傾向があります。

  • 遠方にある山林や農地
  • 固定資産税が課税されていない土地
  • 評価額が低い土地
  • 私道や墓地などの共有持分
  • 祖父母やさらに前の世代から引き継いだ土地
  • 被相続人が若い頃に取得した土地
  • 所有権の一部の持分だけを有する不動産

相続人が存在を知らなければ、遺産分割協議の対象にもならず、相続登記も行われません。

そこで、登記名義人の氏名・住所などを手掛かりに、全国の不動産を一覧的に検索できる仕組みが導入されました。

3 誰が請求できるのか

所有不動産記録証明書を請求できるのは、主に次の人です。

(1)不動産の登記名義人本人

自分が所有権の登記名義人として記録されている不動産について、証明書を請求できます。

例えば、「自分が昔取得した土地を含め、どのような不動産を所有しているのか確認したい」という場合にも利用できます。

(2)登記名義人の相続人

登記名義人が亡くなっている場合、その相続人は、亡くなった方の所有不動産について証明書を請求できます。

配偶者や子だけでなく、相続関係によっては、親、兄弟姉妹、甥・姪などが請求できる場合もあります。

もっとも、相続人として請求する場合は、戸籍謄本などによって、被相続人が死亡したことや、請求者が相続人であることを証明する必要があります。

(3)代理人

本人や相続人から委任を受けた代理人も請求できます。

その場合には、原則として委任状などが必要です。

なお、所有不動産記録証明書は、通常の登記事項証明書とは異なり、誰でも自由に請求できるものではありません。個人の財産に関する情報であるため、請求できる人が限定されています。

4 どのように不動産を検索するのか

所有不動産記録証明制度では、登記簿に記録されている所有者の氏名・住所などを検索条件として不動産を調べます。

ここで重要なのは、検索条件として入力した氏名・住所と、登記簿に記録されている氏名・住所が一致しなければ、不動産が検索結果に表示されない可能性があるという点です。

例えば、被相続人が生前に何度も転居しているにもかかわらず、不動産登記上の住所変更をしていなかった場合には、現在の住所だけで検索しても、古い住所で登記された不動産が見つからないことがあります。

そのため、被相続人について、次の情報をできる限り確認しておく必要があります。

  • 死亡時の氏名・住所
  • 旧姓
  • 過去の住所
  • 氏名の旧字体・異体字
  • 住居表示実施前の住所
  • 海外居住歴がある場合の住所や氏名表記

過去の住所は、戸籍の附票や住民票の除票などから確認できる場合があります。

複数の氏名・住所を検索条件とする場合には、その氏名や住所を証明する戸籍、戸籍の附票、住民票の除票などが必要になることがあります。

5 請求に必要な書類

相続人が、亡くなった方の所有不動産記録証明書を請求する場合、一般的には次のような書類が必要になります。

  • 所有不動産記録証明書交付請求書
  • 被相続人の死亡が分かる戸籍・除籍謄本
  • 請求者が相続人であることを証明する戸籍謄本
  • 被相続人の住所を確認できる住民票の除票または戸籍の附票
  • 請求者の本人確認書類
  • 過去の氏名・住所を検索する場合、それを証明する書類
  • 代理人が請求する場合は委任状
  • 郵送請求の場合は返信用封筒・切手

ただし、相続関係や検索条件によって必要書類は異なります。

法定相続情報一覧図の写しを取得している場合には、戸籍一式に代えて利用できることがあります。

6 請求方法と手数料

所有不動産記録証明書は、次の方法で請求できます。

(1)法務局の窓口で書面請求する方法

所定の交付請求書と必要書類を法務局に提出します。

書面請求の手数料は、検索条件1件につき、証明書1通当たり1,600円です。手数料は収入印紙で納付します。

(2)法務局へ郵送で請求する方法

請求書、必要書類、収入印紙、返信用封筒・切手などを郵送して請求することもできます。

窓口に出向く必要がないため、遠方に住んでいる相続人でも利用できます。

(3)オンラインで請求する方法

登記・供託オンライン申請システムの申請用総合ソフトを利用して、オンラインで請求する方法もあります。

オンライン請求の手数料は、交付方法によって次のとおりです。

  • 郵送で受け取る場合:1,500円
  • 法務局の窓口で受け取る場合:1,470円

オンライン請求の手数料は、インターネットバンキングやペイジー対応ATMなどによる電子納付となります。

なお、手数料は証明書全体で一律ではなく、原則として「検索条件ごと」にかかります。

例えば、被相続人について4種類の氏名・住所を検索条件として書面請求する場合、1,600円×4件で6,400円となる場合があります。

7 所有不動産記録証明書を取得すれば、すべての不動産が判明するのか

所有不動産記録証明制度は非常に便利ですが、証明書を取得すれば、被相続人に関係するすべての不動産が必ず判明するとは限りません。

特に、次のような場合には注意が必要です。

(1)登記簿上の住所と検索条件が一致しない場合

被相続人が住所変更登記をしていなかった場合、死亡時の住所だけで検索しても、古い住所で登記されている不動産が表示されない可能性があります。

過去の住所が複数ある場合には、それぞれを検索条件とすることを検討する必要があります。

(2)氏名の表記が異なる場合

旧姓、旧字体、異体字などにより、検索条件と登記簿上の氏名が一致しないことがあります。

例えば、「髙」と「高」、「﨑」と「崎」など、文字の違いにも注意が必要です。

(3)登記されていない建物など

所有不動産記録証明制度は、登記情報を検索する制度です。

そのため、そもそも登記されていない建物などは、原則として検索結果に表示されません。

(4)被相続人以外の名義になっている場合

実際には被相続人が代金を支払った不動産でも、登記名義が別人であれば、被相続人の氏名・住所による検索結果には表示されません。

反対に、登記名義は被相続人であるものの、実質的な所有者について争いがある場合には、別途法的な検討が必要です。

(5)証明書だけでは権利関係の詳細が分からない場合

所有不動産記録証明書は、不動産を一覧的に把握するための資料です。

抵当権の有無、差押えの有無、共有者の詳細など、すべての登記事項が記載されるわけではありません。

不動産が判明した後は、各不動産の登記事項証明書を取得し、詳しい権利関係を確認する必要があります。

8 名寄帳との違い

不動産調査の方法としては、市区町村が発行する「名寄帳」もあります。

両者の主な違いは、次のとおりです。

項目 所有不動産記録証明書 名寄帳
情報の基礎 法務局の登記情報 市区町村の固定資産課税情報
調査範囲 全国の登記情報 原則として各市区町村内
主な目的 登記名義人の不動産を一覧的に確認する 固定資産税の課税対象を確認する
未登記建物 原則として把握できない 課税されていれば掲載される可能性がある
住所・氏名の不一致 検索されない可能性がある 課税情報の内容による

両方の制度にはそれぞれ長所と限界があります。

そのため、相続財産をできる限り漏れなく調査するには、所有不動産記録証明書だけに頼らず、次の資料も併せて確認することが重要です。

  • 固定資産税の納税通知書
  • 市区町村の名寄帳
  • 登記事項証明書
  • 権利証・登記識別情報通知
  • 売買契約書
  • 預金通帳の固定資産税引落履歴
  • 被相続人宛ての郵便物
  • 自治体や土地改良区からの通知
  • 火災保険・地震保険の契約書類

9 不動産が見つかった後に必要な手続

所有不動産記録証明書を取得しただけでは、相続手続が完了するわけではありません。

不動産が判明した後は、通常、次のような手続が必要になります。

1.各不動産の登記事項証明書を取得する

2.固定資産評価証明書などを取得して評価額を確認する

3.遺言書の有無を確認する

4.相続人と相続財産を確定する

5.相続人間で遺産分割協議を行う

6.遺産分割協議書を作成する

7.相続登記を申請する

8.必要に応じて相続税を申告する

相続人間で話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることも検討します。

また、不動産を誰が取得するかによって、相続税だけでなく、将来売却した場合の譲渡所得税や、他の相続人に支払う代償金などにも違いが生じます。

遺産分割の方法を決める際には、法律面と税務面の両方から検討することが重要です。

10 相続登記には期限がある

2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。

相続によって不動産を取得した相続人は、原則として、相続によって所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。

正当な理由なく期限内に申請しなかった場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

また、相続登記の義務化前に発生した相続も対象です。過去の相続について相続登記をしていない場合には、原則として2027年(令和9年)3月31日までに対応する必要があります。

遺産分割がまとまらず、期限内に通常の相続登記ができない場合には、「相続人申告登記」を利用して、ひとまず申請義務を履行する方法もあります。

ただし、相続人申告登記をしただけでは、遺産分割や最終的な相続登記が完了するわけではありません。遺産分割成立後には、改めてその内容に沿った登記が必要です。

11 よくある質問

Q1 父が不動産を持っていなかった場合も証明書は発行されますか

請求した検索条件に該当する不動産がない場合には、その旨を示す証明書が交付されます。

ただし、「該当する不動産がない」という結果であっても、別の住所や旧姓で登記された不動産、未登記建物などが存在しないことまで証明するものではありません。

Q2 兄弟の一人だけで請求できますか

共同相続人全員で請求する必要はなく、相続人の一人から請求できます。

ただし、被相続人との相続関係を戸籍などで証明する必要があります。

Q3 遺産分割協議の前でも請求できますか

請求できます。

むしろ、遺産分割協議を始める前に取得し、対象となる不動産をできる限り把握しておくことが重要です。

遺産の一部を見落としたまま協議すると、後から不動産が判明し、追加の遺産分割協議が必要になることがあります。

Q4 所有不動産記録証明書があれば、そのまま相続登記できますか

所有不動産記録証明書だけで相続登記ができるわけではありません。

相続登記には、戸籍関係書類、住民票、遺言書または遺産分割協議書、固定資産評価証明書などが必要になります。

Q5 相続人同士で不動産の分け方が決まらない場合はどうすればよいですか

まずは、不動産の評価額や利用状況、売却可能性などを確認したうえで協議します。

話合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。

不動産の分け方には、一人が取得して他の相続人に代償金を支払う「代償分割」、不動産を売却して代金を分ける「換価分割」などがあります。安易に共有名義にすると、将来の売却や管理をめぐって新たな紛争が生じることがあるため、慎重な検討が必要です。

12 まとめ

2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度により、亡くなった方が登記名義人となっている不動産を、全国の登記情報から一覧的に調べられるようになりました。

これまで把握が難しかった遠方の山林、農地、共有持分などを発見できる可能性があり、相続財産調査において非常に有用な制度です。

もっとも、検索条件となる氏名・住所と登記簿上の記録が一致しなければ、不動産が検索結果に表示されない可能性があります。また、未登記建物などは対象になりません。

相続財産を漏れなく調査するには、所有不動産記録証明書だけでなく、戸籍の附票、名寄帳、固定資産税の納税通知書、登記事項証明書なども併せて確認することが重要です。

不動産が判明した後には、遺産分割協議、相続登記、相続税申告などの手続が必要になります。

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、相続財産の調査、遺産分割協議、遺産分割調停、相続登記に向けた手続などについてご相談をお受けしています。

当事務所には税理士事務所も併設しているため、不動産の分け方だけでなく、相続税や不動産売却時の税金なども含め、法律・税務の両面から検討することが可能です。

「亡くなった親の不動産がどこにあるか分からない」「不動産の分け方について相続人同士で話がまとまらない」といった場合には、お早めにご相談ください。

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『令和8年8月の土曜相談日』のお知らせ

2026-07-10

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。

令和8年8月の相談日は次の通りです。

① 8月 1日(土)(担当弁護士:三塚)

② 8月22日(土)(担当弁護士:髙橋)

お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。

相談場所は、原則として五橋本店となります。

(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)

また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。

皆様のご予約をお待ちしております。

夏季休業のお知らせ

2026-07-10

誠に勝手ながら、弁護士法人結の杜総合法律事務所は、以下の日程を夏季休業とさせて頂きます。

【夏季休業期間】 8月10日(月)~8月14日(金)

【業務開始日】  8月17日(月)~平常どおり、営業致します。

休業期間中のFAX、E-Mail、ホームページ専用フォームによるお問い合わせは受け付けておりますが、お問い合わせに対する回答は、原則として8月17日(月) 以降になりますのでご了承くださいませ。

ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。

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