コラム「遺産分割はやり直すことができるのか?〜弁護士・税理士が法律と税務の両面から解説〜」

1. 遺産分割協議のやり直しは可能か?

遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立します(民法907条1項)。そして、いったん成立した遺産分割協議には相続開始時に遡る効力(遡及効)が生じます。

しかし、共同相続人全員の合意があれば、その協議を解除し、新たに遺産分割協議をやり直すことも可能です。最高裁平成2年9月27日判決でも、その旨が明確に認められています。

ただし、やり直しには法律上の注意点も多く、慎重な対応が求められます。

【ポイント】

  • 全相続人の合意が前提

  • 当初の協議を「解除」したうえで新たに協議する形になる

  • 登記や税務上の影響に注意が必要

2. やり直しの遡及効が制限される場合とは?

遺産分割協議の結果は相続開始時に遡りますが、その効力が第三者に影響を及ぼす場合には制限されることがあります(民法909条)。

たとえば、最初の協議によって不動産を取得した相続人がそれを第三者に売却した後、やり直しの協議で別の相続人に帰属させた場合、第三者の権利を不安定にさせることになります。そのようなケースでは、遡及効は制限されます。

3. 遺産分割のやり直しが必要となるケース

(1)新たな事情が判明した場合

遺産分割後に新たな相続財産が見つかった、または当初の協議内容に不満や疑義が生じた場合など、協議をやり直すことで問題解決を図ることができます。

※当初の協議書に「新たな財産が見つかった場合は○○が取得する」と記載しておけば、やり直しの手間を省けます。

(2)当初の協議に無効や取消しの原因がある場合

相続人の一部が協議に加わっていなかった、または意思能力を欠いていた場合などは、協議自体が無効または取り消される可能性があります。

この場合、新たな協議を行っても「贈与」とみなされず、税務上も相続として扱われます。

(3)無効ではないが合意解除によってやり直す場合

協議自体は有効であるものの、相続人全員の合意により解除して再協議を行うことも可能です。ただしこの場合、新たな財産の移転が贈与や交換と扱われる可能性があり、相続税ではなく贈与税が課税されることがあります。

この点については、以下の裁判例も重要です:

  • 最判平成13年6月14日:再協議により代償債務が発生し、財産を無償移転する場合は「贈与」とみなされ得る。

  • 最判昭和62年1月22日:相続税の負担調整のためのやり直しについては「相続による取得」と判断し、不動産取得税の非課税が認められた。

4. 税務上の注意点

遺産分割のやり直しは、法的には可能ですが、税務上の取扱いが大きく異なる点に注意が必要です。

  • 合意解除による再協議 → 贈与税の対象になることも

  • 無効・取消しの原因がある場合 → 更正の請求や修正申告により対応

相続税や贈与税の負担の違いは非常に大きいため、法的な判断だけでなく、税務的な検討も欠かせません。


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