Author Archive
コラム「遺留分侵害額の算定方法とは? ― 生前贈与・遺言がある場合の具体的な計算と注意点を弁護士が解説 ―」
1 はじめに|「全財産を長男に」という遺言でも、何ももらえないとは限りません
相続において、次のようなご相談は非常に多く寄せられます。
Q
「夫が『全財産を長男に相続させる』という遺言を残して亡くなりました。
相続人である私や二男には、何か請求できる権利はあるのでしょうか。
また、遺留分侵害額はどのように算定するのですか。」
A
遺言によって相続分が指定されていても、一定の相続人には「遺留分」が保障されています。
遺留分侵害額は、
①相続開始時の財産+②一定期間内の生前贈与-③債務
によって算定され、その金額に法定相続分と遺留分割合を乗じて計算します。
本コラムでは、遺留分侵害額の具体的な算定方法について、条文・判例を踏まえながら、実務上問題となりやすいポイントを中心にわかりやすく解説します。
2 遺留分侵害額の基本的な計算式
遺留分を算定するための財産の価額は、次の式で計算します(民法1043条1項)。
遺留分算定の基礎財産
=
① 相続開始時に被相続人が有していた積極財産
+
② 遺留分算定の対象となる生前贈与
-
③ 被相続人の債務(借金・未払金など)
この金額に、
-
各相続人の法定相続分
-
各相続人の遺留分割合
を掛け合わせた額が、具体的な遺留分額となります。
相続や遺言によって取得した財産がこの金額に満たない場合、不足分について遺留分侵害額請求を行うことができます。
※遺留分侵害額の算定時点は相続開始時であり、相続開始後に誰かが債務を弁済していても、原則として算定に影響はありません(最判平成8年11月26日)。
3 「相続開始時に有していた財産」とは何か
ここでいう「財産」とは、被相続人の積極財産を指します。
(1)算入されるもの
-
不動産
-
預貯金
-
株式・投資信託
-
売掛金・貸付金 など
(2)算入されないもの
-
祭祀財産(仏壇・位牌・墓地等)(民法896条・897条)
(3)評価が難しい財産がある場合
条件付き権利や評価困難な権利については、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価によって価格を定めます(民法1043条2項)。
4 生前贈与はどこまで遺留分算定に含まれるのか
生前贈与を自由に認めてしまうと、遺留分制度が形骸化します。一方で、すべてを遡及すると取引の安全が害されます。
そのため、民法は次のようなルールを定めています(民法1044条)。
(1)原則
-
相続開始前1年以内の贈与
→ 原則としてすべて算入 -
1年以上前の贈与
→ 贈与者・受贈者双方が「遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合」のみ算入
(2)相続人への贈与の特則
相続人に対する贈与については、
相続開始前10年間にされた「特別受益」に該当する贈与が算入対象となります(民法1044条3項)。
(3)贈与と同視される行為
-
無償の信託利益の供与
-
共有持分の放棄
-
寄附行為 なども、贈与と同様に扱われます。
5 不相当な対価での売買(実質的な贈与)
時価とかけ離れた価格で行われた有償行為については、
当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合に限り、
贈与とみなされ、遺留分算定の対象となります(民法1045条2項)。
6 贈与の評価時点はいつか
-
相続開始前1年以内の贈与
→ 贈与契約時を基準(通説・裁判例) -
金銭贈与
→ 相続開始時の貨幣価値に換算して評価(最判昭和51年3月18日)
7 控除される「債務」の範囲
遺留分算定において控除される債務には、以下が含まれます。
(1)含まれるもの
-
借金・未払金
-
租税・公租公課
-
罰金などの公法上の債務
(2)含まれないもの
-
相続税
-
遺産管理費用
-
遺言書検認申立費用 など
相続人自身が被相続人に対して有していた債権・債務についても、混同による消滅を前提とせず、相続開始時の客観的財産状態を基準に判断されます(さいたま地裁平成21年5月15日判決)。
8 「全財産を一人に相続させる」遺言がある場合の算定
相続人の一人に全財産を相続させる遺言がある場合でも、他の相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。
この点につき、最高裁平成21年3月24日判決は、
相続債務も含めて指定相続人が承継するのが原則としたうえで、
遺留分侵害額の算定において、
遺留分権利者の法定相続分に相当する債務額を加算することはできない
と明確に判断しています。
9 「遺留分権利者に損害を加えることを知っていた」とは?
贈与当事者に悪意や害意まで必要ではありませんが、
-
贈与財産が残存財産を上回ること
-
将来、財産状況に大きな変動がないこと
などを具体的に認識していたことが必要とされています(大判昭和11年6月17日)。
10 まとめ|遺留分侵害額の算定は専門的判断が不可欠です
遺留分侵害額の算定は、
-
生前贈与の有無・時期
-
不動産や株式の評価
-
債務の取扱い
-
遺言の内容
など、高度な法的判断と実務経験が不可欠です。
少しの評価の違いで、請求できる金額が大きく変わることも珍しくありません。
11 弁護士への相談のご案内
結の杜総合法律事務所では、
-
遺留分侵害額請求が可能かどうか
-
おおよその請求額の見通し
-
手続の流れ・期間・費用
について、弁護士が直接、丁寧にご説明しております。
無理な勧誘は一切ありません。
まずはお気軽にご相談ください。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
『令和8年1月の土曜相談日』のお知らせ
弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。
なお、令和7年12月より土曜相談日を月2回に変更させていただきます。皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
令和8年1月の相談日は次の通りです。
① 1月17日(土)(担当弁護士:髙橋)
② 1月31日(土)(担当弁護士:三塚)
お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。
相談場所は、原則として五橋本店となります。
(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)
また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。
皆様のご予約をお待ちしております。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
【重要なお知らせ】泉中央支店閉業のお知らせ(令和7年12月末)
このたび、当事務所では事業再編および業務効率化の一環として、
「泉中央支店」を令和7年(2025年)12月末日をもって閉業することとなりました。
これまで泉中央支店をご利用いただいた皆様には、心より御礼申し上げます。
閉業後の業務につきましては、仙台五橋本店および東京支店にて引き続きご相談・ご依頼を承りますので、ご安心ください。
■ 閉業日
令和7年12月31日(予定)
■ 閉業後の対応について
- 現在ご依頼中の案件は、担当弁護士がそのまま職務を遂行いたします。
- 新規のご相談・ご依頼は、仙台五橋本店、東京支店にて通常どおり受け付けております。
- これまで泉中央支店をご利用いただいていた方も、支店閉業後は全ての窓口でご相談いただけます。
弁護士法人結の杜総合法律事務所
(仙台五橋本店)
〒980-0022 仙台市青葉区五橋一丁目1番17号 仙台ビルディング駅前館9階
TEL:022-797-0741
FAX:022-797-0641
皆様にはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、職員一丸となって職務を遂行して参りますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
年末年始休業のお知らせ
誠に勝手ながら、弁護士法人結の杜総合法律事務所は、以下の日程を年末年始休業とさせて頂きます。
【年末年始休業期間】 12月27日(土)~1月4日(日)
【業務開始日】 1月5日(月) ~平常どおり、営業致します。
休業期間中のFAX、E-Mail、ホームページ専用フォームによるお問い合わせは受け付けておりますが、お問い合わせに対する回答は、1月5日(月) 以降になりますのでご了承くださいませ。 ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
コラム「遺言執行者とはどのようなことをするの?|選任が必要なケースと手続を徹底解説」
1 はじめに
「遺言書があるのに遺言執行者の指定がない。相続人は遺言執行者を選任しなければならないのか?」
「家庭裁判所で遺言執行者を選任する場合、どんな手続や書類が必要なのか?」
遺言・相続のご相談では、このような質問を多く頂きます。
この記事では、遺言執行者が必要となるケース、選任手続、就任後の具体的な業務内容まで専門家が分かりやすく解説します。
2 遺言執行者はいつ必要?|選任の要否を分かりやすく解説
遺言書の内容は大きく次の3つに分かれ、内容によって「遺言執行者が必須かどうか」が異なります。
① 遺言執行者だけが執行できる事項(必ず選任が必要)
-
推定相続人の廃除(民893)
-
推定相続人の廃除の取消し(民894②)
-
認知(民781②)
これらは遺言執行者がいなければ法的に効力を実現できない内容のため、遺言執行者の選任が不可欠です。
② 遺言執行者・相続人どちらでも執行できる事項(トラブル防止のため選任が望ましい)
-
遺贈(民964)
-
一般財団法人の設立(一般法人152②)
-
信託の設定(信託3二)
-
生命保険金受取人の変更
相続人間で意見が分かれたり、協力を得にくい場合は、遺言執行者を選任することで手続がスムーズになり、争いの予防につながります。
③ 遺言執行が不要な事項(選任不要)
-
相続分の指定(民902)
-
遺産分割方法の指定(民908)
-
遺産分割の禁止(民908)
-
遺言執行者の指定(民1006①)
-
遺言の撤回 など
上記のように、内容により遺言執行者の必要性は異なります。
遺言の種類・構成を正しく判定することが重要であり、専門家に確認するメリットの大きいポイントです。
3 遺言執行者を家庭裁判所で選任する手続|必要書類・期間の目安
遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人が就任できない事情がある場合には、家庭裁判所で選任手続を行います(民1010)。
■ 選任申立てができる人(利害関係人)
-
相続人
-
受遺者
-
遺言者の債権者
-
相続財産管理人
-
相続財産清算人 など
■ 管轄の家庭裁判所
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所(家事209①)。
■ 必要書類(標準的なもの)
-
被相続人の戸籍(除籍・改製原戸籍)
-
遺言書(写しまたは検認調書謄本)
-
遺言執行者候補者の住民票等
-
利害関係を証する資料(戸籍等)
※遺言書が検認済の場合、家庭裁判所に記録が残っていれば一部省略が可能。
■ どんな場合に裁判所は選任する?
-
遺言内容に「遺言執行者必須事項」が含まれる
-
相続人間の対立があり、遺言の内容が実現できない
-
相続人の協力が得られない
-
相続財産が多岐にわたり管理が複雑
遺贈が絡む案件や相続人が複数いるケースでは、家庭裁判所での選任は非常に一般的です。
4 遺言執行者の具体的な業務内容(時系列で理解)
遺言執行者は、遺言内容を実現するために幅広い権限と義務を持ちます(民1012)。
(1)遺言書の検認手続(必要な場合)
自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認」を行います(民1004)。
検認前に開封してしまうと過料の対象となるため注意が必要です。
※公正証書遺言・法務局保管の自筆証書遺言は検認不要。
(2)遺言書の正本・謄本の取得(公正証書遺言の場合)
相続手続で必要となるため、公証役場で請求して取得します。
(3)遺言書情報証明書の取得(自筆証書遺言・法務局保管)
(4)遺言の有効性の確認(方式・遺言能力・内容)
方式違背や遺言能力の欠如が疑われる場合、無効確認訴訟が検討されます。
(5)相続人・受遺者の調査・通知(民1007)
出生から死亡までの戸籍を取り寄せて相続人を確定し、遺言内容を通知します。
受遺者に対しては遺贈の受諾の意思確認も必要です。
(6)財産目録の作成・交付(民1011)
不動産・預貯金・株式・保険等を調査し、相続財産を目録にまとめ相続人へ交付。
(7)遺言の実現(執行)
-
不動産の名義変更
-
銀行口座の払い戻し
-
遺贈財産の引渡し
-
廃除手続 等
遺言執行者は「善良な管理者の注意義務」を負いながら業務を行います。
(8)遺言執行終了の通知
執行が完了したら相続人等に終了を通知します(民1020)。
(9)報酬・費用の精算
遺言に記載がある場合はその通り。
ない場合は相続人との協議、合意できなければ家庭裁判所が決定します。
5 まとめ|遺言執行者の選任は専門家に相談することで安心・確実に進められます
遺言執行者は、
-
遺言書の確認
-
相続人の調査
-
名義変更
-
遺贈手続
-
財産管理
など、法律知識と実務経験が必要な場面が多く、専門性の高い業務です。
特に、
-
相続人間の対立がある
-
不動産・預貯金・株式等の財産が複雑
-
遺贈がある
-
廃除や認知など法律行為を含む
といったケースでは、専門家が遺言執行者になることでスムーズに手続が進みます。
6 当事務所が選ばれる理由|弁護士×税理士によるワンストップ相続サービス
弁護士法人結の杜総合法律事務所では、
弁護士・税理士である代表髙橋が、法律と相続税の両面からサポートいたします。
-
相続・遺言・遺産分割に強い弁護士が対応
-
税理士法人を併設(東北地方で唯一の運営形態)
-
相続税申告までワンストップ対応
-
事前に費用・手続の流れを丁寧に説明
-
強引な勧誘なし・安心して相談できる体制
遺言執行だけでなく、遺産分割・相続税申告・財産調査まで一括対応が可能です。
まずはお気軽にご相談ください。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
『令和7年12月の土曜相談日』のお知らせ
弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。
なお、令和7年12月より土曜相談日を月2回に変更させていただきます。皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
令和7年12月の相談日は次の通りです。
① 12月13日(土)(担当弁護士:三塚)
② 12月20日(土)(担当弁護士:高橋)
お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。
相談場所は、原則として五橋本店となります。
(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)
また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。
皆様のご予約をお待ちしております。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
コラム「遺言の撤回・取消しはできるのか?|仙台・宮城の弁護士が詳しく解説」
1 はじめに:遺言は一度作成したら変更できないのか?
「一度作った遺言は、もう二度と取り消せないのでは?」
「公正証書遺言を破り捨てたら撤回になるの?」
このような疑問を持つ方は多くいらっしゃいます。
しかし、遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度であり、生前であればいつでも撤回・変更することが可能です。
ただし、撤回や取消しには一定の法的要件や注意点があります。
今回は、仙台・宮城エリアで多数の相続案件を扱う結の杜総合法律事務所が、遺言の撤回・取消しについてわかりやすく解説します。
2 遺言の撤回はいつでも可能(民法1022条)
遺言は、遺言者が亡くなって初めて効力を発生します。
したがって、遺言者は生前であればいつでも自由に撤回・変更が可能です(民法1022条)。
この「撤回」は、遺言の効力が発生する前に、遺言内容を無効にする手続きを指します。
つまり、「新しい遺言を書いて古い内容を取り消す」などの方法で行うことができます。
3 遺言書を破棄した場合の扱い(法定撤回)
遺言の撤回は通常、遺言の方式に従って行いますが、民法は例外的に「法定撤回」として、以下のような場合には自動的に撤回されたものとみなすと定めています。
(1)法定撤回の主なパターン
-
後の遺言が前の遺言と抵触するとき(民法1023条1項)
-
遺言後に、内容と抵触する生前処分を行ったとき(民法1023条2項)
-
遺言者が故意に遺言書を破棄したとき(民法1024条前段)
-
遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したとき(民法1024条後段)
(2)「破棄」とはどんな行為か
破棄とは、遺言書を焼却・切断・判読不能にするような物理的行為を指します。
ただし、文字が多少残っていても、「全体に赤線を引く」など内容を完全に無効化する意思が明確な場合は撤回とみなされます(最高裁平成27年11月20日判決)。
(3)撤回が成立するための条件
破棄による撤回が成立するには、遺言者の故意(撤回の意思)が必要です。
他人が誤って破棄した場合や、偶然破損しただけでは撤回にはなりません。
4 公正証書遺言を破棄した場合は撤回になるのか?
公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、遺言者が破棄することはできません。
では、遺言者が手元の正本(写し)を破棄した場合に撤回とみなされるのかが問題になります。
この点について判例はありませんが、通説では次のように解されています。
-
原本は公証役場にあるため、正本を破棄しても遺言の撤回とはならない。
-
一方で、「正本を破棄する行為をもって撤回の意思表示とみなすべき」とする学説も存在。
したがって、公正証書遺言を撤回したい場合は、必ず新たな遺言を作成することが安全です。
5 錯誤・詐欺・強迫による遺言の取消し
(1)取消しが認められる場合
遺言も法律行為の一種です。
そのため、錯誤(思い違い)・詐欺・脅迫によって作成された遺言は、民法95条・96条により取り消すことができます。
取消しが認められると、遺言は遡って無効となります(民法121条)。
(2)取消権を行使できる人
-
遺言者本人(生前に意思能力がある場合)※ただし、否定説もあり。
-
相続人(遺言者死亡後に取消権を相続)
ただし、詐欺や脅迫を行った相続人は民法891条4号の相続欠格事由に該当するため、取消権を行使することはできません。
(3)取消しの方法
取消しの手続は特に定められていませんが、実務上は次のような方法が考えられます。
-
他の相続人が連名で、錯誤・詐欺・強迫により無効である旨を通知
-
「遺言無効確認の訴え」を家庭裁判所に提起する(最判昭47・2・15)
6 まとめ:遺言の撤回・取消しは専門家への相談が重要
遺言の撤回や取消しは、法的要件や証拠関係が複雑で、相続トラブルに発展するリスクが非常に高い分野です。
特に、公正証書遺言や錯誤・詐欺・強迫が関係する場合には、早期に弁護士へ相談することが重要です。
7 結の杜総合法律事務所のご案内(仙台・宮城の遺言・相続専門チーム)
結の杜総合法律事務所は、税理士法人を併設し、弁護士・税理士である髙橋和聖が代表を務めています。
東北エリアで、弁護士法人と税理士法人を一体運営している事務所はほとんどなく、
法律・税務・会計をワンストップでサポートできる体制が整っています。
ご相談いただける内容
-
遺言書の作成・撤回・取消し
-
公正証書遺言の手続サポート
-
相続放棄・遺産分割協議・遺留分請求
-
相続税申告や税務対策のご相談
仙台市・宮城県で遺言や相続に関するお悩みがある方は、
まずはお気軽にご相談ください。
初回相談では、費用・手続・スケジュールを弁護士が丁寧にご説明いたします。
無理な勧誘は一切ありません。
🔹 総合サイトはこちら
👉 [結の杜総合法律事務所|総合サイト]
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
『令和7年11月の土曜相談日』のお知らせ
弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月3回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。
令和7年11月の相談日は次の通りです。
① 11月 8日(土)(担当弁護士:三塚)
② 11月22日(土)(担当弁護士:原)
③ 11月29日(土)(担当弁護士:高橋)
お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。
相談場所は、原則として五橋本店となります。
(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)
また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。
皆様のご予約をお待ちしております。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
コラム「遺産分割前に被相続人名義の預金を引き出すことはできる?弁護士が解説」
1 はじめに
「父が亡くなり、葬儀費用がすぐに必要ですが、遺産分割の話し合いはまだできていません。父名義の預金を引き出して支払うことは可能でしょうか。」
このようなご相談は非常に多く寄せられます。実際、相続開始後は預金口座が凍結されるため、自由に払戻しを受けられないケースが多くあります。では、遺産分割前でも預金の払戻しはできるのか、最新の法律と実務をもとに解説します。
2 相続が開始すると口座は凍結される
被相続人が死亡すると、銀行などの金融機関はその事実を確認した時点で預金口座を凍結します。これにより、預金の引き出しや口座振替は停止され、原則として相続人全員の同意や遺産分割協議が整うまで払戻しはできません。
3 過去の取り扱いと最高裁の判断
かつては、預金を「可分債権」と考え、一部の相続人が自分の法定相続分を単独で引き出せるとする見解もありました。しかし実務は統一されず、銀行ごとに対応が異なっていました。
この点について、平成28年12月19日最高裁決定は「預貯金は遺産分割の対象であり、相続開始と同時に分割されるものではない」と判示しました。これにより、遺産分割前に相続人が単独で預金を引き出すことは原則できなくなりました。
4 法律改正による新しい払戻制度
その後の法改正(令和元年7月1日施行)により、相続人が葬儀費用や生活費に充てるために一定額の払戻しを受けられる制度が導入されました。
-
民法909条の2に基づく払戻し
相続人は、各金融機関ごとに「150万円」を上限として、遺産分割前でも単独で払戻し請求が可能です。 -
家庭裁判所による保全処分(仮分割の仮処分)
上限額を超える払戻しが必要な場合は、家庭裁判所に申立てを行うことで、葬儀費用や相続人の生活費等に充てるための預金払戻しが認められる場合があります。
5 実際に引き出せる金額の目安
例えば、被相続人がA銀行に普通預金600万円・定期預金900万円、B銀行に普通預金780万円を残していた場合、法定相続分2分の1の相続人は以下の金額まで払戻しが可能です。
-
A銀行:上限150万円
-
B銀行:130万円(780万円×1/3×1/2)
つまり合計280万円を遺産分割前に引き出せる計算になります。
6 必要書類と手続き
払戻しを受けるためには、各銀行の「相続届(一部払戻用)」を提出します。併せて、以下の書類が必要となります。
-
被相続人の通帳・証書・キャッシュカード
-
被相続人の除籍謄本・改製原戸籍等
-
相続人全員の戸籍謄本または法定相続情報一覧図
-
請求者相続人の印鑑登録証明書
銀行や状況によっては追加書類を求められる場合があります。
7 弁護士に相談すべきケース
-
葬儀費用や当面の生活費に充てるため、できるだけ早く預金を引き出したい
-
相続人間で意見が合わず、手続きが進まない
-
預金以外に不動産・株式なども含まれており、遺産分割が複雑になりそう
このような場合は、弁護士にご相談いただくことで、最適な手続きの選択肢や金融機関との交渉方法を明確にすることができます。
8 まとめ
-
相続開始後、被相続人名義の口座は凍結される。
-
遺産分割前でも、法改正により 各金融機関150万円までの払戻し が可能。
-
上限額を超える場合は、家庭裁判所の「保全処分」を利用できる。
-
手続きには戸籍謄本や相続届など複数の書類が必要。
遺産分割や預金払戻しの問題は、法律と税務の両面の知識が不可欠です。
9 結の杜総合法律事務所にご相談ください
当事務所は、弁護士法人と税理士法人を併設しており、東北では唯一の「弁護士+税理士」のワンストップ体制を整えています。
相続手続き・遺産分割・相続税申告まで一貫して対応可能です。
-
初回相談無料
-
手続きの流れや費用を明確にご説明
-
無理な勧誘は一切なし
「葬儀費用を支払うためにすぐにお金が必要」「口座凍結で困っている」といった方は、まずはお気軽にご相談ください。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
『令和7年10月の土曜相談日』のお知らせ
弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月3回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。
令和7年10月の相談日は次の通りです。
① 10月 4日(土)(担当弁護士:原)
② 10月11日(土)(担当弁護士:三塚)
③ 10月25日(土)(担当弁護士:高橋)
お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。
相談場所は、原則として五橋本店となります。
(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)
また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。
皆様のご予約をお待ちしております。
宮城県仙台市にある弁護士法人結の杜総合法律事務所は、弁護士と税理士が連携し、遺言・相続に関する無料相談を提供しています。当事務所では、相続トラブルや手続きの悩みに対し、専門チームが丁寧に対応いたします。初回相談や費用見積もりは無料で、仙台・宮城の皆様に寄り添ったサービスを心掛けています。相続に関するお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
