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コラム「遺言執行者とはどのようなことをするの?|選任が必要なケースと手続を徹底解説」

2025-11-28

1 はじめに

「遺言書があるのに遺言執行者の指定がない。相続人は遺言執行者を選任しなければならないのか?」

「家庭裁判所で遺言執行者を選任する場合、どんな手続や書類が必要なのか?」

遺言・相続のご相談では、このような質問を多く頂きます。

この記事では、遺言執行者が必要となるケース、選任手続、就任後の具体的な業務内容まで専門家が分かりやすく解説します。


2 遺言執行者はいつ必要?|選任の要否を分かりやすく解説

遺言書の内容は大きく次の3つに分かれ、内容によって「遺言執行者が必須かどうか」が異なります。

① 遺言執行者だけが執行できる事項(必ず選任が必要)

  • 推定相続人の廃除(民893)

  • 推定相続人の廃除の取消し(民894②)

  • 認知(民781②)

これらは遺言執行者がいなければ法的に効力を実現できない内容のため、遺言執行者の選任が不可欠です。

② 遺言執行者・相続人どちらでも執行できる事項(トラブル防止のため選任が望ましい)

  • 遺贈(民964)

  • 一般財団法人の設立(一般法人152②)

  • 信託の設定(信託3二)

  • 生命保険金受取人の変更

相続人間で意見が分かれたり、協力を得にくい場合は、遺言執行者を選任することで手続がスムーズになり、争いの予防につながります。

③ 遺言執行が不要な事項(選任不要)

  • 相続分の指定(民902)

  • 遺産分割方法の指定(民908)

  • 遺産分割の禁止(民908)

  • 遺言執行者の指定(民1006①)

  • 遺言の撤回 など

上記のように、内容により遺言執行者の必要性は異なります。

遺言の種類・構成を正しく判定することが重要であり、専門家に確認するメリットの大きいポイントです。


3 遺言執行者を家庭裁判所で選任する手続|必要書類・期間の目安

遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人が就任できない事情がある場合には、家庭裁判所で選任手続を行います(民1010)。

■ 選任申立てができる人(利害関係人)

  • 相続人

  • 受遺者

  • 遺言者の債権者

  • 相続財産管理人

  • 相続財産清算人 など

■ 管轄の家庭裁判所

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所(家事209①)。

■ 必要書類(標準的なもの)

  • 被相続人の戸籍(除籍・改製原戸籍)

  • 遺言書(写しまたは検認調書謄本)

  • 遺言執行者候補者の住民票等

  • 利害関係を証する資料(戸籍等)

※遺言書が検認済の場合、家庭裁判所に記録が残っていれば一部省略が可能。

■ どんな場合に裁判所は選任する?

  • 遺言内容に「遺言執行者必須事項」が含まれる

  • 相続人間の対立があり、遺言の内容が実現できない

  • 相続人の協力が得られない

  • 相続財産が多岐にわたり管理が複雑

遺贈が絡む案件や相続人が複数いるケースでは、家庭裁判所での選任は非常に一般的です。


4 遺言執行者の具体的な業務内容(時系列で理解)

遺言執行者は、遺言内容を実現するために幅広い権限と義務を持ちます(民1012)。

(1)遺言書の検認手続(必要な場合)

自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認」を行います(民1004)。

検認前に開封してしまうと過料の対象となるため注意が必要です。

※公正証書遺言・法務局保管の自筆証書遺言は検認不要。

(2)遺言書の正本・謄本の取得(公正証書遺言の場合)

相続手続で必要となるため、公証役場で請求して取得します。

(3)遺言書情報証明書の取得(自筆証書遺言・法務局保管)

(4)遺言の有効性の確認(方式・遺言能力・内容)

方式違背や遺言能力の欠如が疑われる場合、無効確認訴訟が検討されます。

(5)相続人・受遺者の調査・通知(民1007)

出生から死亡までの戸籍を取り寄せて相続人を確定し、遺言内容を通知します。

受遺者に対しては遺贈の受諾の意思確認も必要です。

(6)財産目録の作成・交付(民1011)

不動産・預貯金・株式・保険等を調査し、相続財産を目録にまとめ相続人へ交付。

(7)遺言の実現(執行)

  • 不動産の名義変更

  • 銀行口座の払い戻し

  • 遺贈財産の引渡し

  • 廃除手続 等

    遺言執行者は「善良な管理者の注意義務」を負いながら業務を行います。

(8)遺言執行終了の通知

執行が完了したら相続人等に終了を通知します(民1020)。

(9)報酬・費用の精算

遺言に記載がある場合はその通り。

ない場合は相続人との協議、合意できなければ家庭裁判所が決定します。


5 まとめ|遺言執行者の選任は専門家に相談することで安心・確実に進められます

遺言執行者は、

  • 遺言書の確認

  • 相続人の調査

  • 名義変更

  • 遺贈手続

  • 財産管理

    など、法律知識と実務経験が必要な場面が多く、専門性の高い業務です。

特に、

  • 相続人間の対立がある

  • 不動産・預貯金・株式等の財産が複雑

  • 遺贈がある

  • 廃除や認知など法律行為を含む

    といったケースでは、専門家が遺言執行者になることでスムーズに手続が進みます。


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コラム「遺言の撤回・取消しはできるのか?|仙台・宮城の弁護士が詳しく解説」

2025-10-31

1 はじめに:遺言は一度作成したら変更できないのか?

「一度作った遺言は、もう二度と取り消せないのでは?」

「公正証書遺言を破り捨てたら撤回になるの?」

このような疑問を持つ方は多くいらっしゃいます。

しかし、遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度であり、生前であればいつでも撤回・変更することが可能です。

ただし、撤回や取消しには一定の法的要件や注意点があります。

今回は、仙台・宮城エリアで多数の相続案件を扱う結の杜総合法律事務所が、遺言の撤回・取消しについてわかりやすく解説します。


2 遺言の撤回はいつでも可能(民法1022条)

遺言は、遺言者が亡くなって初めて効力を発生します。

したがって、遺言者は生前であればいつでも自由に撤回・変更が可能です(民法1022条)。

この「撤回」は、遺言の効力が発生する前に、遺言内容を無効にする手続きを指します。

つまり、「新しい遺言を書いて古い内容を取り消す」などの方法で行うことができます。


3 遺言書を破棄した場合の扱い(法定撤回)

遺言の撤回は通常、遺言の方式に従って行いますが、民法は例外的に「法定撤回」として、以下のような場合には自動的に撤回されたものとみなすと定めています。

(1)法定撤回の主なパターン

  1. 後の遺言が前の遺言と抵触するとき(民法1023条1項)

  2. 遺言後に、内容と抵触する生前処分を行ったとき(民法1023条2項)

  3. 遺言者が故意に遺言書を破棄したとき(民法1024条前段)

  4. 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したとき(民法1024条後段)

(2)「破棄」とはどんな行為か

破棄とは、遺言書を焼却・切断・判読不能にするような物理的行為を指します。

ただし、文字が多少残っていても、「全体に赤線を引く」など内容を完全に無効化する意思が明確な場合は撤回とみなされます(最高裁平成27年11月20日判決)。

(3)撤回が成立するための条件

破棄による撤回が成立するには、遺言者の故意(撤回の意思)が必要です。

他人が誤って破棄した場合や、偶然破損しただけでは撤回にはなりません。


4 公正証書遺言を破棄した場合は撤回になるのか?

公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、遺言者が破棄することはできません。

では、遺言者が手元の正本(写し)を破棄した場合に撤回とみなされるのかが問題になります。

この点について判例はありませんが、通説では次のように解されています。

  • 原本は公証役場にあるため、正本を破棄しても遺言の撤回とはならない。

  • 一方で、「正本を破棄する行為をもって撤回の意思表示とみなすべき」とする学説も存在。

したがって、公正証書遺言を撤回したい場合は、必ず新たな遺言を作成することが安全です。


5 錯誤・詐欺・強迫による遺言の取消し

(1)取消しが認められる場合

遺言も法律行為の一種です。

そのため、錯誤(思い違い)・詐欺・脅迫によって作成された遺言は、民法95条・96条により取り消すことができます。

取消しが認められると、遺言は遡って無効となります(民法121条)。

(2)取消権を行使できる人

  • 遺言者本人(生前に意思能力がある場合)※ただし、否定説もあり。

  • 相続人(遺言者死亡後に取消権を相続)

ただし、詐欺や脅迫を行った相続人は民法891条4号の相続欠格事由に該当するため、取消権を行使することはできません。

(3)取消しの方法

取消しの手続は特に定められていませんが、実務上は次のような方法が考えられます。

  • 他の相続人が連名で、錯誤・詐欺・強迫により無効である旨を通知

  • 「遺言無効確認の訴え」を家庭裁判所に提起する(最判昭47・2・15)


6 まとめ:遺言の撤回・取消しは専門家への相談が重要

遺言の撤回や取消しは、法的要件や証拠関係が複雑で、相続トラブルに発展するリスクが非常に高い分野です。

特に、公正証書遺言や錯誤・詐欺・強迫が関係する場合には、早期に弁護士へ相談することが重要です。


7 結の杜総合法律事務所のご案内(仙台・宮城の遺言・相続専門チーム)

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ご相談いただける内容

  • 遺言書の作成・撤回・取消し

  • 公正証書遺言の手続サポート

  • 相続放棄・遺産分割協議・遺留分請求

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仙台市・宮城県で遺言や相続に関するお悩みがある方は、

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コラム「遺産分割前に被相続人名義の預金を引き出すことはできる?弁護士が解説」

2025-10-03

1 はじめに

「父が亡くなり、葬儀費用がすぐに必要ですが、遺産分割の話し合いはまだできていません。父名義の預金を引き出して支払うことは可能でしょうか。」

このようなご相談は非常に多く寄せられます。実際、相続開始後は預金口座が凍結されるため、自由に払戻しを受けられないケースが多くあります。では、遺産分割前でも預金の払戻しはできるのか、最新の法律と実務をもとに解説します。


2 相続が開始すると口座は凍結される

被相続人が死亡すると、銀行などの金融機関はその事実を確認した時点で預金口座を凍結します。これにより、預金の引き出しや口座振替は停止され、原則として相続人全員の同意や遺産分割協議が整うまで払戻しはできません。


3 過去の取り扱いと最高裁の判断

かつては、預金を「可分債権」と考え、一部の相続人が自分の法定相続分を単独で引き出せるとする見解もありました。しかし実務は統一されず、銀行ごとに対応が異なっていました。

この点について、平成28年12月19日最高裁決定は「預貯金は遺産分割の対象であり、相続開始と同時に分割されるものではない」と判示しました。これにより、遺産分割前に相続人が単独で預金を引き出すことは原則できなくなりました。


4 法律改正による新しい払戻制度

その後の法改正(令和元年7月1日施行)により、相続人が葬儀費用や生活費に充てるために一定額の払戻しを受けられる制度が導入されました。

  • 民法909条の2に基づく払戻し

    相続人は、各金融機関ごとに「150万円」を上限として、遺産分割前でも単独で払戻し請求が可能です。

  • 家庭裁判所による保全処分(仮分割の仮処分)

    上限額を超える払戻しが必要な場合は、家庭裁判所に申立てを行うことで、葬儀費用や相続人の生活費等に充てるための預金払戻しが認められる場合があります。


5 実際に引き出せる金額の目安

例えば、被相続人がA銀行に普通預金600万円・定期預金900万円、B銀行に普通預金780万円を残していた場合、法定相続分2分の1の相続人は以下の金額まで払戻しが可能です。

  • A銀行:上限150万円

  • B銀行:130万円(780万円×1/3×1/2)

つまり合計280万円を遺産分割前に引き出せる計算になります。


6 必要書類と手続き

払戻しを受けるためには、各銀行の「相続届(一部払戻用)」を提出します。併せて、以下の書類が必要となります。

  • 被相続人の通帳・証書・キャッシュカード

  • 被相続人の除籍謄本・改製原戸籍等

  • 相続人全員の戸籍謄本または法定相続情報一覧図

  • 請求者相続人の印鑑登録証明書

銀行や状況によっては追加書類を求められる場合があります。


7 弁護士に相談すべきケース

  • 葬儀費用や当面の生活費に充てるため、できるだけ早く預金を引き出したい

  • 相続人間で意見が合わず、手続きが進まない

  • 預金以外に不動産・株式なども含まれており、遺産分割が複雑になりそう

このような場合は、弁護士にご相談いただくことで、最適な手続きの選択肢金融機関との交渉方法を明確にすることができます。


8 まとめ

  • 相続開始後、被相続人名義の口座は凍結される。

  • 遺産分割前でも、法改正により 各金融機関150万円までの払戻し が可能。

  • 上限額を超える場合は、家庭裁判所の「保全処分」を利用できる。

  • 手続きには戸籍謄本や相続届など複数の書類が必要。

遺産分割や預金払戻しの問題は、法律と税務の両面の知識が不可欠です。


9 結の杜総合法律事務所にご相談ください

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コラム「共有不動産の解消方法・地番整備・境界確定を弁護士が解説」

2025-09-12

1 はじめに

相続財産の中に共有不動産が含まれる場合、共有状態を放置すると将来的にトラブルが起こりやすくなります。例えば、相続を重ねることで共有者が増え、権利関係が複雑化して譲渡や売却が困難になったり、境界や地番が不明確なままでは遺産分割協議や相続税対策が進めにくくなることがあります。

そのため、不動産を相続した段階で、

  • 共有関係の解消

  • 地番の整備

  • 境界の確定

を行っておくことが、相続・遺産分割をスムーズに進めるための有効な対策となります。


2 共有不動産の法律関係

(1)共有とは

複数人が1つの不動産を一定割合で所有することを「共有」といい、各人の割合を「持分」と呼びます。相続発生後の「遺産共有」もこれに含まれます。

ただし、遺産共有の場合は遺産分割協議または家庭裁判所の審判によって解消されるのが原則です。相続開始から10年が経過しない限り、単純に「共有物分割請求」をすることはできません(民法258条の2)。

(2)共有物の利用・管理・処分

  • 各共有者は、自分の持分を自由に処分可能

  • 不動産全体の利用や変更は、原則として共有者全員の同意が必要

  • 建物の賃貸などの「管理行為」は、持分価格の過半数で決定可能

このように、共有不動産は権利関係が複雑で、協力が得られない共有者がいる場合には解消が進まないケースも少なくありません。


3 共有不動産の解消方法

(1)共有物分割協議

共有者間で合意できれば、以下の方法で分割可能です。

  • 現物分割:土地を分筆してそれぞれ単独所有にする

  • 代償分割:一人が取得し、他の共有者に代償金を支払う

  • 換価分割:売却して代金を分け合う

(2)共有物分割請求訴訟

協議がまとまらない場合、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起できます。判決により現物分割・代償分割・競売による分割が行われます。

(3)所在不明共有者がいる場合

共有者の中に連絡がつかない人がいる場合には、

  • 所在不明共有者の持分取得の裁判

  • 持分譲渡権限付与の裁判

を利用して、共有不動産を処理できる制度があります。相続や売却を進める上で有効な手続きです。


4 地番整備・境界確定の手続き

(1)地番の整備

地番は土地ごとに登記所で付される番号で、所有権や分筆登記の基礎となります。整理されていない場合、相続や売却時にトラブルの原因となるため、早めの整備が望ましいです。

(2)境界確定

隣地所有者との境界が不明確な場合には、

  • 筆界特定制度(法務局に申請して専門家が調査)

  • 境界確定訴訟(裁判所で最終的に確定)

といった手続きを利用して、境界を明確化します。これは将来の土地トラブル予防に直結します。


5 まとめ

  • 共有不動産は放置すると相続トラブル・売却困難・税務上の不利益につながる

  • 解消方法には「協議」「裁判」「所在不明共有者への対応」など複数の制度がある

  • 相続不動産については、地番の整備や境界確定を同時に進めることが重要


6 当事務所へのご相談

弁護士法人結の杜総合法律事務所は、代表弁護士が税理士資格を有し、税理士法人も運営しています。相続・不動産の法律相談だけでなく、相続税・譲渡税など税務面のアドバイスまで一貫してサポート可能です。

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コラム「死因贈与とは?遺言との違いや税金の注意点を弁護士・税理士が解説」

2025-09-05

1 はじめに

「親が自筆証書遺言を残していたが、押印がなく無効だといわれた。記載されている内容通りに財産を取得できないのか?」

このようなご相談を受けることがあります。

結論から言うと、押印を欠いた遺言は原則無効です。しかし、場合によっては『死因贈与契約』として有効に扱える可能性があります。

本記事では、死因贈与とは何か、遺言との違い、税金上の注意点について、弁護士かつ税理士がわかりやすく解説します。


2 死因贈与と遺言の関係(法的性質)

民法554条では「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与」=死因贈与と規定されています。

遺贈と似ていますが、厳密には以下の点が異なります。

  • 死因贈与は「生前贈与の一種」であり、贈与者の死亡を始期とする期限付贈与と考えられる。

  • 遺言は死亡まで効力を発しませんが、死因贈与は契約成立時点で受贈者に「期待権」が生じます。


3 死因贈与と遺言の違い(4つの視点)

(1) 撤回の可否

  • 遺言は自由に撤回可能。

  • 死因贈与は契約であるため、原則撤回できません。判例(最判昭58・1・24)でも同様の立場がとられています。

(2) 贈与財産の処分

  • 遺言:死亡まで効力がない → その間の処分は「撤回」とみなされる。

  • 死因贈与:契約成立済み → 抵触する処分は「債務不履行」として扱われる。

(3) 方式

  • 遺言:自筆証書、公正証書など厳格な方式が必要。

  • 死因贈与:口頭でも契約可能。契約書も全文自筆である必要なし。

(4) 効力と承継

  • 死因贈与契約成立時点で受贈者に期待権が発生。

  • 贈与者死亡後、受贈者が既に亡くなっていれば、その相続人が権利を引き継げる。


4 死因贈与と税金(相続税・不動産取得税・登録免許税の違い)

(1) 相続税

  • 共通点:遺贈も死因贈与も、相続税の課税対象になります。

(2) 不動産取得税

  • 遺贈による取得:非課税。

  • 死因贈与による取得:課税対象。仙台高裁判例(平成2年12月25日)でも確認されています。

(3) 登録免許税

  • 相続人への遺贈:相続と同じ税率(不動産価額の1,000分の4)。

  • 死因贈与:相続人であっても高い税率(不動産価額の1,000分の20)が課される。


5 無効な遺言書と死因贈与契約

押印がない、印字が多いなど形式を欠いた遺言書は無効です。

しかし、そこに署名があり、さらに受贈者への口頭申入れと承諾があれば、死因贈与契約が成立したと認められる余地があります。

実務では「遺言が無効=全て諦める」ではなく、死因贈与の可能性を検討することが重要です。


6 まとめ

  • 死因贈与は「契約」であり、遺言と異なり撤回が制限され、税金面でも扱いが変わる。

  • 相続税は共通だが、不動産取得税や登録免許税では大きな差がある。

  • 無効な遺言があっても、死因贈与契約として認められる可能性がある。


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コラム「【相続対策×生命保険】相続税の節税に効果的な生命保険の活用法を弁護士・税理士が解説!」

2025-08-01

1.生命保険は相続対策に有効!その理由とは?

相続税対策として近年注目されているのが、生命保険の活用です。

被相続人(亡くなられた方)が保険料を支払い、相続人を受取人とした場合、生命保険金には一定額の非課税枠が認められ、相続税の節税に大きな効果があります。

ただし、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって課税される税金の種類が異なるため、加入前に正しい設計が必要です。

また、生命保険金は民法上の「相続財産」には含まれませんが、相続税法上は課税対象となるなど、法律上の取り扱いも注意すべき点があります。

※生命保険が遺産分割の対象になるかどうかについては、以下のコラムもご覧ください:

👉 「生命保険金は遺産分割の対象?相続財産に含まれるかを弁護士が解説」


2.【節税効果あり】生命保険の非課税枠とは?

2-1.非課税となる条件と金額

相続人が死亡保険金を受け取る場合、以下の計算式によって算出される金額までは非課税となります:

非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数

※相続放棄した人や相続権を失った人はカウントされません。

この非課税枠を超えた部分にのみ相続税が課税されます。保険金の全額が非課税になるケースもあるため、相続税の節税に非常に有効です。

2-2.非課税枠の配分のルール

相続人ごとの非課税適用額は、以下のように按分して計算されます:

非課税限度額 × 各相続人の受取保険金の額 ÷ 相続人全体の受取保険金の合計額
 

2-3.注意点:第三者を受取人にすると非課税にならない

例えば、内縁の妻や公益法人など、法定相続人以外を受取人に指定した場合には、非課税枠は適用されません。さらに、相続税2割加算の対象となることもありますので注意が必要です。


3.生命保険にかかる税金の違いを整理

契約形態によって課される税金は以下のように変わります。

保険料負担者 被保険者 保険金受取人 課税される税金
① 甲 相続税
② 乙 所得税(※一時所得)
③ 乙 贈与税
④ 甲 相続税(契約権)
  • 所得税:保険料を負担した人と受取人が同一の場合。

  • 贈与税:保険料負担者・被保険者・受取人がすべて異なる場合。

  • 相続税:保険料負担者が亡くなり、その契約権自体が相続された場合など。


4.【事例解説】生命保険による相続税の節税効果とは?

4-1.事例紹介

  • 被相続人:父

  • 相続人:子5人(法定相続人)

  • 財産:保険金3,000万円+自宅5,000万円+その他7,000万円(計1億5,000万円)

※保険加入により預貯金から3,000万円を支出

4-2.保険あり・なしの比較

区分 相続税額
保険を活用した場合 725万円
保険を活用しなかった場合 1,100万円

差額:375万円の節税効果!

生命保険を活用することで、現金で相続するよりも非課税枠が適用される分、手元に残る財産が大きくなります。


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コラム「遺産分割において不動産の評価額はどのように決まるのか?【弁護士・税理士が解説】」

2025-07-11

相続財産に不動産が含まれている場合、その「評価額」をめぐって相続人間で争いが生じることは少なくありません。不動産の評価方法には複数あり、評価額の違いが遺産分割の公平性に大きく影響するからです。

本コラムでは、相続における不動産の評価方法について、法律・税務の両面から解説します。不動産の公的評価基準や実務でよく使われる評価方法、裁判所での扱いなどを知ることで、トラブルを避けた円満な遺産分割に役立てていただけます。


1. 相続における不動産の評価方法とは?

遺産分割の際、不動産の評価額をどう決めるかは極めて重要なポイントです。評価額によって、各相続人が取得する財産の公平性が左右されます。

不動産の評価には主に次のような方法があります。


2. 不動産の公的評価基準とは?

(1)公示価格(こうじかかく)

  • 国土交通省が毎年公表する、特定の標準地の価格。

  • 不動産鑑定士による評価をもとに、正常価格として設定される。

  • 取引価格の指標や公共事業の算定基準となる。

ただし、公示価格は「標準地」に基づくため、個別の不動産の特殊事情を反映できないという限界があります。

(2)固定資産税評価額

  • 市町村が定める土地・建物の評価額で、課税の基準として利用される。

  • 公示価格の約70%が目安。

  • 3年に1回の評価替えであるため、地価変動に対するタイムラグが発生します。

(3)相続税評価額(路線価)

  • 国税庁が公表する「路線価」または「倍率方式」によって算定。

  • 毎年見直されており、地価の変動を比較的正確に反映

  • 相続税の申告実務でもよく使われるため、実務上、最も合意が得られやすい方法です。


3. 公的評価基準以外の評価方法

(1)不動産業者による査定

  • 不動産業者が提示する想定売却価格。

  • 無料で入手しやすい一方、客観性や公平性に疑問が残ることも。

(2)家事調停委員の専門意見

  • 裁判所の調停手続で、不動産鑑定士資格を持つ委員が意見を述べる制度。

  • 一定の専門性と客観性はあるが、現地調査を行わない点で精緻さに限界があります。

(3)私的鑑定

  • 当事者が不動産鑑定士に依頼して実施する鑑定。

  • 鑑定評価基準に従って行われれば、最も客観的で信頼性が高い方法といえます。

  • タイトルが「鑑定書」ではなく「意見書」や「査定書」の場合は注意が必要です。


4. 不動産評価額に関する合意と裁判所の判断

(1)合意できる場合

評価額は法的に絶対的なものではなく、相続人間の合意で自由に決められます。例えば、公示価格と固定資産税評価額の中間を取る、といった柔軟な調整も可能です。

(2)合意できない場合の扱い(分割方法別)

・換価分割(売却して現金化)

評価額は問題にならず、売却金額を分け合う。

・現物分割(不動産を誰かが取得)

不動産同士の相対的な評価が分かればよく、必ずしも鑑定は不要です。

・代償分割(取得者が他の相続人に金銭を支払う)

不動産の絶対的な価値が必要となるため、鑑定が必要です。


5. 裁判所が行う不動産鑑定のポイント

(1)評価時点の選定

  • 通常、遺産分割時点の価格を基準に鑑定。

  • 寄与分・特別受益がある場合は、相続開始時と遺産分割時の両方の鑑定が必要です。

(2)前提条件の確認

  • 鑑定の精度は「前提条件」で左右されます。

    • 抵当権の有無

    • 建物や借地権の影響 など

  • 鑑定前に当事者と裁判所がしっかりすり合わせることが重要です。


6. 鑑定書の信用性を確認するには?

不動産鑑定士が作成する書面のうち、タイトルが「鑑定書」であれば鑑定評価基準に基づく信頼性の高い資料といえます。

一方、「査定書」「意見書」「評価書」と記載されている場合は、簡易的な内容であることが多く、信用性が相対的に低い可能性があるため注意が必要です。


7. 相続・不動産評価にお困りの方へ

結の杜総合法律事務所では、東北唯一の弁護士法人・税理士法人併設事務所として、法務と税務の両面から相続を総合的にサポートしています。

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コラム「遺産分割はやり直すことができるのか?〜弁護士・税理士が法律と税務の両面から解説〜」

2025-07-04

1. 遺産分割協議のやり直しは可能か?

遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立します(民法907条1項)。そして、いったん成立した遺産分割協議には相続開始時に遡る効力(遡及効)が生じます。

しかし、共同相続人全員の合意があれば、その協議を解除し、新たに遺産分割協議をやり直すことも可能です。最高裁平成2年9月27日判決でも、その旨が明確に認められています。

ただし、やり直しには法律上の注意点も多く、慎重な対応が求められます。

【ポイント】

  • 全相続人の合意が前提

  • 当初の協議を「解除」したうえで新たに協議する形になる

  • 登記や税務上の影響に注意が必要

2. やり直しの遡及効が制限される場合とは?

遺産分割協議の結果は相続開始時に遡りますが、その効力が第三者に影響を及ぼす場合には制限されることがあります(民法909条)。

たとえば、最初の協議によって不動産を取得した相続人がそれを第三者に売却した後、やり直しの協議で別の相続人に帰属させた場合、第三者の権利を不安定にさせることになります。そのようなケースでは、遡及効は制限されます。

3. 遺産分割のやり直しが必要となるケース

(1)新たな事情が判明した場合

遺産分割後に新たな相続財産が見つかった、または当初の協議内容に不満や疑義が生じた場合など、協議をやり直すことで問題解決を図ることができます。

※当初の協議書に「新たな財産が見つかった場合は○○が取得する」と記載しておけば、やり直しの手間を省けます。

(2)当初の協議に無効や取消しの原因がある場合

相続人の一部が協議に加わっていなかった、または意思能力を欠いていた場合などは、協議自体が無効または取り消される可能性があります。

この場合、新たな協議を行っても「贈与」とみなされず、税務上も相続として扱われます。

(3)無効ではないが合意解除によってやり直す場合

協議自体は有効であるものの、相続人全員の合意により解除して再協議を行うことも可能です。ただしこの場合、新たな財産の移転が贈与や交換と扱われる可能性があり、相続税ではなく贈与税が課税されることがあります。

この点については、以下の裁判例も重要です:

  • 最判平成13年6月14日:再協議により代償債務が発生し、財産を無償移転する場合は「贈与」とみなされ得る。

  • 最判昭和62年1月22日:相続税の負担調整のためのやり直しについては「相続による取得」と判断し、不動産取得税の非課税が認められた。

4. 税務上の注意点

遺産分割のやり直しは、法的には可能ですが、税務上の取扱いが大きく異なる点に注意が必要です。

  • 合意解除による再協議 → 贈与税の対象になることも

  • 無効・取消しの原因がある場合 → 更正の請求や修正申告により対応

相続税や贈与税の負担の違いは非常に大きいため、法的な判断だけでなく、税務的な検討も欠かせません。


【結の杜総合法律事務所では】

当事務所は、弁護士法人と税理士法人を併設運営している東北唯一の法律事務所です。相続問題に精通した弁護士と税理士が連携し、遺産分割の再協議や相続税の修正申告など、法律と税務の両面からワンストップで対応いたします。

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コラム「相続税の申告期限までに遺産分割が終わらないときの対処法とは?」

2025-05-31

「父が亡くなって相続が発生しましたが、相続人同士でもめており、相続税の申告期限までに遺産分割が終わりそうにありません。このような場合、相続税の申告はどうすればよいのでしょうか?」

結の杜総合法律事務所には、相続税の申告期限に関するこのようなご相談が多く寄せられています。

相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要がありますが、遺産分割が申告期限までに完了しないケースは少なくありません。

本記事では、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合の具体的な対処法や、適用できる相続税の特例制度について、弁護士・税理士の観点から詳しく解説いたします。


1. 遺産分割が終わっていない場合でも相続税の申告は必要

相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割が完了していない場合でも、相続税の申告は必要です。

この場合、未分割の財産は、法定相続分に基づいて各相続人が取得したものとして課税価格を計算し、申告書を作成・提出します。

ポイント:

  • 期限を過ぎても申告書の提出は可能(期限後申告)。

  • ただし、無申告加算税などのペナルティが発生することがあります。


2. 遺産分割が終わっていないと適用できない相続税の特例

相続税の軽減措置として以下のような特例がありますが、これらは申告期限までに遺産分割が完了していることが条件です。

  • 配偶者の税額軽減

  • 小規模宅地等の特例

  • 特定計画山林の特例

ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付すれば、分割完了後に特例を適用できる可能性があります。


3. やむを得ない事情による延長措置と承認申請

遺産分割が申告期限から3年以内にも終わらなかった場合でも、「やむを得ない事情」があると認められれば、特例の適用が可能になる場合があります。

「やむを得ない事情」とは

  • 遺産分割調停・審判・訴訟が継続している

  • 遺産分割が一時的に禁止されている

  • 相続人の重病や海外在住などで分割が困難

このような場合は、「承認申請書」を所轄税務署に提出する必要があります。


4. 分割後の対応:更正の請求・修正申告

遺産分割が後日完了した場合の対応は以下の通りです:

  • 相続税額が減額になる場合:「更正の請求」が可能

  • 相続税額が増額になる場合:「修正申告」が必要

いずれも、期限や提出書類に注意が必要ですので、早めに専門家へご相談ください。


5. 弁護士・税理士が在籍する結の杜総合法律事務所だから安心

結の杜総合法律事務所は、弁護士法人と税理士法人を一体運営しており、代表の髙橋は弁護士・税理士の両資格を有しています。東北エリアでこの形態は唯一です。

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コラム「【弁護士監修】相続放棄とは?借金相続を回避する方法と手続きの流れを解説」

2025-04-25

「親が亡くなった後、借金の請求が来た」そんなときの対処法とは?

Q:父が亡くなりましたが、多額の借金があるようです。相続放棄をすれば借金を相続しなくて済むのでしょうか?

A:相続放棄をすることで、借金を含むすべての相続財産を引き継がずに済みます。ただし、相続放棄には期限があるため、注意が必要です。


相続放棄とは?~借金も含めて一切の相続を断る手続き~

相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった方)の財産や借金など一切の権利義務を引き継がないとする法律上の手続きです(民法第915条)。相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされ、借金の支払い義務も免れます。

【注意】遺産分割協議で相続分を「0」にしても相続放棄にはなりません

相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要であり、遺産分割協議で何も受け取らなかっただけでは、放棄とは扱われません。


相続放棄の手続きと期限(熟慮期間)

相続放棄の方法

相続放棄を希望する場合は、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申述を行う必要があります。この3か月を「熟慮期間」と呼びます。

3か月のカウントはいつから?

熟慮期間の起算点は以下の2点を知ったときからです:

  • 被相続人の死亡という事実

  • 自分が相続人になったこと

【例外】熟慮期間の延長も可能

借金の有無がすぐには分からない場合など、相続財産の調査に時間を要するケースでは、家庭裁判所に熟慮期間の延長申立てが可能です。弁護士などの専門家の助言を受けながら対応するのが安心です。


相続放棄が認められないケースとは?

以下の場合には、相続放棄が認められず、「単純承認(全てを相続する)」とみなされるので注意が必要です(民法第921条):

  • 相続財産の一部でも処分した場合

  • 熟慮期間内に相続放棄の手続きをしなかった場合

  • 放棄後に相続財産を隠す・使う・財産目録に記載しないなどの行為をした場合


相続放棄をしても受け取れるものとは?~生命保険金や死亡退職金など~

生命保険金は相続財産に含まれない

死亡保険金の受取人が特定されている場合は、その保険金は受取人固有の財産とされ、相続財産には含まれません。したがって、相続放棄をしても受け取ることが可能です。

死亡退職金も相続放棄しても受給可能な場合が多い

就業規則等により受取人が定められている場合、死亡退職金も相続財産とはみなされず、相続放棄の影響を受けません。ただし、ケースにより異なるため確認が必要です。


相続放棄と税務上の取扱い

準確定申告の義務

被相続人が生前に申告すべきだった所得税等については、相続人が準確定申告を行う義務があります。ただし、相続放棄をした人は最初から相続人でなかったとみなされるため、申告義務はありません

相続税の基礎控除に影響

相続税の非課税枠の計算では、相続放棄がなかったと仮定した相続人の数をもとに基礎控除額を算出します。また、生命保険金については、相続放棄をすると非課税枠の適用が受けられなくなる点にも注意が必要です。


弁護士による相続放棄のサポートを活用しましょう

相続放棄は、期限が短く、要件も複雑な手続きです。放棄の意思がある場合は、できるだけ早く専門家に相談することが重要です。

結の杜総合法律事務所では、

  • 相続放棄のご相談

  • 家庭裁判所への申述書の作成

  • 手続全般の代理申請

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