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コラム「遺産分割において不動産の評価額はどのように決まるのか?【弁護士・税理士が解説】」

2025-07-11

相続財産に不動産が含まれている場合、その「評価額」をめぐって相続人間で争いが生じることは少なくありません。不動産の評価方法には複数あり、評価額の違いが遺産分割の公平性に大きく影響するからです。

本コラムでは、相続における不動産の評価方法について、法律・税務の両面から解説します。不動産の公的評価基準や実務でよく使われる評価方法、裁判所での扱いなどを知ることで、トラブルを避けた円満な遺産分割に役立てていただけます。


1. 相続における不動産の評価方法とは?

遺産分割の際、不動産の評価額をどう決めるかは極めて重要なポイントです。評価額によって、各相続人が取得する財産の公平性が左右されます。

不動産の評価には主に次のような方法があります。


2. 不動産の公的評価基準とは?

(1)公示価格(こうじかかく)

  • 国土交通省が毎年公表する、特定の標準地の価格。

  • 不動産鑑定士による評価をもとに、正常価格として設定される。

  • 取引価格の指標や公共事業の算定基準となる。

ただし、公示価格は「標準地」に基づくため、個別の不動産の特殊事情を反映できないという限界があります。

(2)固定資産税評価額

  • 市町村が定める土地・建物の評価額で、課税の基準として利用される。

  • 公示価格の約70%が目安。

  • 3年に1回の評価替えであるため、地価変動に対するタイムラグが発生します。

(3)相続税評価額(路線価)

  • 国税庁が公表する「路線価」または「倍率方式」によって算定。

  • 毎年見直されており、地価の変動を比較的正確に反映

  • 相続税の申告実務でもよく使われるため、実務上、最も合意が得られやすい方法です。


3. 公的評価基準以外の評価方法

(1)不動産業者による査定

  • 不動産業者が提示する想定売却価格。

  • 無料で入手しやすい一方、客観性や公平性に疑問が残ることも。

(2)家事調停委員の専門意見

  • 裁判所の調停手続で、不動産鑑定士資格を持つ委員が意見を述べる制度。

  • 一定の専門性と客観性はあるが、現地調査を行わない点で精緻さに限界があります。

(3)私的鑑定

  • 当事者が不動産鑑定士に依頼して実施する鑑定。

  • 鑑定評価基準に従って行われれば、最も客観的で信頼性が高い方法といえます。

  • タイトルが「鑑定書」ではなく「意見書」や「査定書」の場合は注意が必要です。


4. 不動産評価額に関する合意と裁判所の判断

(1)合意できる場合

評価額は法的に絶対的なものではなく、相続人間の合意で自由に決められます。例えば、公示価格と固定資産税評価額の中間を取る、といった柔軟な調整も可能です。

(2)合意できない場合の扱い(分割方法別)

・換価分割(売却して現金化)

評価額は問題にならず、売却金額を分け合う。

・現物分割(不動産を誰かが取得)

不動産同士の相対的な評価が分かればよく、必ずしも鑑定は不要です。

・代償分割(取得者が他の相続人に金銭を支払う)

不動産の絶対的な価値が必要となるため、鑑定が必要です。


5. 裁判所が行う不動産鑑定のポイント

(1)評価時点の選定

  • 通常、遺産分割時点の価格を基準に鑑定。

  • 寄与分・特別受益がある場合は、相続開始時と遺産分割時の両方の鑑定が必要です。

(2)前提条件の確認

  • 鑑定の精度は「前提条件」で左右されます。

    • 抵当権の有無

    • 建物や借地権の影響 など

  • 鑑定前に当事者と裁判所がしっかりすり合わせることが重要です。


6. 鑑定書の信用性を確認するには?

不動産鑑定士が作成する書面のうち、タイトルが「鑑定書」であれば鑑定評価基準に基づく信頼性の高い資料といえます。

一方、「査定書」「意見書」「評価書」と記載されている場合は、簡易的な内容であることが多く、信用性が相対的に低い可能性があるため注意が必要です。


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コラム「遺産分割はやり直すことができるのか?〜弁護士・税理士が法律と税務の両面から解説〜」

2025-07-04

1. 遺産分割協議のやり直しは可能か?

遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立します(民法907条1項)。そして、いったん成立した遺産分割協議には相続開始時に遡る効力(遡及効)が生じます。

しかし、共同相続人全員の合意があれば、その協議を解除し、新たに遺産分割協議をやり直すことも可能です。最高裁平成2年9月27日判決でも、その旨が明確に認められています。

ただし、やり直しには法律上の注意点も多く、慎重な対応が求められます。

【ポイント】

  • 全相続人の合意が前提

  • 当初の協議を「解除」したうえで新たに協議する形になる

  • 登記や税務上の影響に注意が必要

2. やり直しの遡及効が制限される場合とは?

遺産分割協議の結果は相続開始時に遡りますが、その効力が第三者に影響を及ぼす場合には制限されることがあります(民法909条)。

たとえば、最初の協議によって不動産を取得した相続人がそれを第三者に売却した後、やり直しの協議で別の相続人に帰属させた場合、第三者の権利を不安定にさせることになります。そのようなケースでは、遡及効は制限されます。

3. 遺産分割のやり直しが必要となるケース

(1)新たな事情が判明した場合

遺産分割後に新たな相続財産が見つかった、または当初の協議内容に不満や疑義が生じた場合など、協議をやり直すことで問題解決を図ることができます。

※当初の協議書に「新たな財産が見つかった場合は○○が取得する」と記載しておけば、やり直しの手間を省けます。

(2)当初の協議に無効や取消しの原因がある場合

相続人の一部が協議に加わっていなかった、または意思能力を欠いていた場合などは、協議自体が無効または取り消される可能性があります。

この場合、新たな協議を行っても「贈与」とみなされず、税務上も相続として扱われます。

(3)無効ではないが合意解除によってやり直す場合

協議自体は有効であるものの、相続人全員の合意により解除して再協議を行うことも可能です。ただしこの場合、新たな財産の移転が贈与や交換と扱われる可能性があり、相続税ではなく贈与税が課税されることがあります。

この点については、以下の裁判例も重要です:

  • 最判平成13年6月14日:再協議により代償債務が発生し、財産を無償移転する場合は「贈与」とみなされ得る。

  • 最判昭和62年1月22日:相続税の負担調整のためのやり直しについては「相続による取得」と判断し、不動産取得税の非課税が認められた。

4. 税務上の注意点

遺産分割のやり直しは、法的には可能ですが、税務上の取扱いが大きく異なる点に注意が必要です。

  • 合意解除による再協議 → 贈与税の対象になることも

  • 無効・取消しの原因がある場合 → 更正の請求や修正申告により対応

相続税や贈与税の負担の違いは非常に大きいため、法的な判断だけでなく、税務的な検討も欠かせません。


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当事務所は、弁護士法人と税理士法人を併設運営している東北唯一の法律事務所です。相続問題に精通した弁護士と税理士が連携し、遺産分割の再協議や相続税の修正申告など、法律と税務の両面からワンストップで対応いたします。

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コラム「相続税の申告期限までに遺産分割が終わらないときの対処法とは?」

2025-05-31

「父が亡くなって相続が発生しましたが、相続人同士でもめており、相続税の申告期限までに遺産分割が終わりそうにありません。このような場合、相続税の申告はどうすればよいのでしょうか?」

結の杜総合法律事務所には、相続税の申告期限に関するこのようなご相談が多く寄せられています。

相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要がありますが、遺産分割が申告期限までに完了しないケースは少なくありません。

本記事では、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合の具体的な対処法や、適用できる相続税の特例制度について、弁護士・税理士の観点から詳しく解説いたします。


1. 遺産分割が終わっていない場合でも相続税の申告は必要

相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割が完了していない場合でも、相続税の申告は必要です。

この場合、未分割の財産は、法定相続分に基づいて各相続人が取得したものとして課税価格を計算し、申告書を作成・提出します。

ポイント:

  • 期限を過ぎても申告書の提出は可能(期限後申告)。

  • ただし、無申告加算税などのペナルティが発生することがあります。


2. 遺産分割が終わっていないと適用できない相続税の特例

相続税の軽減措置として以下のような特例がありますが、これらは申告期限までに遺産分割が完了していることが条件です。

  • 配偶者の税額軽減

  • 小規模宅地等の特例

  • 特定計画山林の特例

ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付すれば、分割完了後に特例を適用できる可能性があります。


3. やむを得ない事情による延長措置と承認申請

遺産分割が申告期限から3年以内にも終わらなかった場合でも、「やむを得ない事情」があると認められれば、特例の適用が可能になる場合があります。

「やむを得ない事情」とは

  • 遺産分割調停・審判・訴訟が継続している

  • 遺産分割が一時的に禁止されている

  • 相続人の重病や海外在住などで分割が困難

このような場合は、「承認申請書」を所轄税務署に提出する必要があります。


4. 分割後の対応:更正の請求・修正申告

遺産分割が後日完了した場合の対応は以下の通りです:

  • 相続税額が減額になる場合:「更正の請求」が可能

  • 相続税額が増額になる場合:「修正申告」が必要

いずれも、期限や提出書類に注意が必要ですので、早めに専門家へご相談ください。


5. 弁護士・税理士が在籍する結の杜総合法律事務所だから安心

結の杜総合法律事務所は、弁護士法人と税理士法人を一体運営しており、代表の髙橋は弁護士・税理士の両資格を有しています。東北エリアでこの形態は唯一です。

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コラム「【弁護士監修】相続放棄とは?借金相続を回避する方法と手続きの流れを解説」

2025-04-25

「親が亡くなった後、借金の請求が来た」そんなときの対処法とは?

Q:父が亡くなりましたが、多額の借金があるようです。相続放棄をすれば借金を相続しなくて済むのでしょうか?

A:相続放棄をすることで、借金を含むすべての相続財産を引き継がずに済みます。ただし、相続放棄には期限があるため、注意が必要です。


相続放棄とは?~借金も含めて一切の相続を断る手続き~

相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった方)の財産や借金など一切の権利義務を引き継がないとする法律上の手続きです(民法第915条)。相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされ、借金の支払い義務も免れます。

【注意】遺産分割協議で相続分を「0」にしても相続放棄にはなりません

相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要であり、遺産分割協議で何も受け取らなかっただけでは、放棄とは扱われません。


相続放棄の手続きと期限(熟慮期間)

相続放棄の方法

相続放棄を希望する場合は、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申述を行う必要があります。この3か月を「熟慮期間」と呼びます。

3か月のカウントはいつから?

熟慮期間の起算点は以下の2点を知ったときからです:

  • 被相続人の死亡という事実

  • 自分が相続人になったこと

【例外】熟慮期間の延長も可能

借金の有無がすぐには分からない場合など、相続財産の調査に時間を要するケースでは、家庭裁判所に熟慮期間の延長申立てが可能です。弁護士などの専門家の助言を受けながら対応するのが安心です。


相続放棄が認められないケースとは?

以下の場合には、相続放棄が認められず、「単純承認(全てを相続する)」とみなされるので注意が必要です(民法第921条):

  • 相続財産の一部でも処分した場合

  • 熟慮期間内に相続放棄の手続きをしなかった場合

  • 放棄後に相続財産を隠す・使う・財産目録に記載しないなどの行為をした場合


相続放棄をしても受け取れるものとは?~生命保険金や死亡退職金など~

生命保険金は相続財産に含まれない

死亡保険金の受取人が特定されている場合は、その保険金は受取人固有の財産とされ、相続財産には含まれません。したがって、相続放棄をしても受け取ることが可能です。

死亡退職金も相続放棄しても受給可能な場合が多い

就業規則等により受取人が定められている場合、死亡退職金も相続財産とはみなされず、相続放棄の影響を受けません。ただし、ケースにより異なるため確認が必要です。


相続放棄と税務上の取扱い

準確定申告の義務

被相続人が生前に申告すべきだった所得税等については、相続人が準確定申告を行う義務があります。ただし、相続放棄をした人は最初から相続人でなかったとみなされるため、申告義務はありません

相続税の基礎控除に影響

相続税の非課税枠の計算では、相続放棄がなかったと仮定した相続人の数をもとに基礎控除額を算出します。また、生命保険金については、相続放棄をすると非課税枠の適用が受けられなくなる点にも注意が必要です。


弁護士による相続放棄のサポートを活用しましょう

相続放棄は、期限が短く、要件も複雑な手続きです。放棄の意思がある場合は、できるだけ早く専門家に相談することが重要です。

結の杜総合法律事務所では、

  • 相続放棄のご相談

  • 家庭裁判所への申述書の作成

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まで、弁護士が丁寧に対応いたします。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

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コラム「財産管理・相続対策としての民事信託の活用法【弁護士が解説】」

2025-04-18

1.民事信託とは?高齢者・障がい者の財産管理や相続対策として注目

民事信託(家族信託とも呼ばれます)は、近年、超高齢社会の進展により、高齢者や障がいのある方の財産管理や、遺言書に代わる柔軟な相続対策の手段として注目を集めています。

これは、親(委託者)が子(受託者)などに対し、自身の財産管理・承継を託し、信頼できる相手に財産を託す仕組みです。

信託は、「委託者」が自身の財産を「受託者」に託し、「受益者」がその利益を受けるという三者関係により構成されます。


2.民事信託の3つの設定方法とその違い

(1)信託契約による信託(遺言代用信託)

最も一般的な方式です。委託者と受託者が契約を結び、財産の管理や承継について取り決めます。

**委託者死亡後に効力を生じる「遺言代用信託」**として設計することで、遺言書なしで円滑な相続が可能になります。

メリット:

  • 受託者が契約内容を把握

  • 遺言方式の制約なし

  • 柔軟な設計が可能

(2)遺言信託

遺言書によって信託を設定する方式です。公正証書遺言での作成が推奨されます。

ただし、遺言の方式違反や検認手続が必要となるリスクもあります。

(3)信託宣言(自己信託)

自身が受託者となる方式です。特定の要件を満たせば設定可能ですが、やや特殊な形式であるため、実務ではあまり一般的ではありません。


3.遺留分侵害と民事信託の関係|注意すべき法的リスク

遺留分侵害額請求(民法1042条以下)は、民事信託にも適用されるため注意が必要です。

信託によって遺留分を侵害する場合、信託の設定が無効となるリスクや、受益権の価値が争点となる可能性があります。

実際の裁判例でも、経済的利益の分配が想定されない信託が公序良俗違反で無効とされたケースがあります。

※民事信託の設計には、遺留分を含めた相続全体のバランス調整が不可欠です。


4.民事信託と課税関係|相続税・贈与税・譲渡所得税との関係

民事信託には以下のような税務リスクが伴います。設計段階から税理士・弁護士と連携することが重要です。

  • 受益者が信託財産を取得したとみなされる場合の贈与税・相続税

  • 信託期間中の所得に対する課税(原則受益者に課税)

  • 受益権の譲渡時の譲渡所得課税

  • 信託終了時の課税処理

信託の形態(自益信託・他益信託)や、受益者の属性(個人・法人)によって課税内容が変わるため、税務面の適切な対応が必須です。


5.民事信託の活用事例|実際の設計例から学ぶ

【ケース1】配偶者の生活を保障しつつ、特定の親族へ不動産を承継

目的:妻に賃料収入を確保しつつ、将来的には親族(弟の子)へ不動産を承継

方法:受益者連続型の信託契約(遺言代用信託)

ポイント

  • 遺言書では実現できない「二次承継」が可能

  • 妻の生存中は生活費として賃料を取得

  • 妻死亡後に弟の子へ資産をスムーズに承継

【ケース2】認知症による判断能力低下を見越したアパート経営の引継ぎ

目的:高齢化による判断能力の低下に備え、アパート経営を円滑に継続

方法:長男を受託者とする信託契約でアパート管理を委任

ポイント

  • 認知症発症後もアパートの修繕・建替えが可能

  • 法定後見制度では対応困難な経営判断にも対応

  • 最終的な資産承継者として長男を設定可能


6.まとめ|民事信託は相続・財産管理の有力な選択肢

民事信託は、柔軟な財産管理・承継手段として大変有用な制度です。

ただし、遺留分や税務、法的要件など、専門知識が必要な場面が多く存在します。

結の杜総合法律事務所では、相続や信託の専門知識を有する弁護士が、信託契約書の作成・設計・相談までトータルでサポートしております。

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コラム「公正証書遺言とは?作成方法・メリット・デメリットを解説!」

2025-03-28

1. はじめに

公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する法的に強固な遺言のことです(民法第969条)。遺言者が公証人の前で遺言内容を口頭で伝え、それを公証人が筆記し、所定の手続きを経て作成されます。

この点が、自筆証書遺言(全文を自筆で記載し、日付・氏名を記入して押印する)との大きな違いです。本記事では、公正証書遺言の作成方法、メリット・デメリットについて詳しく解説します。

2. 公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言を作成するには、公証役場に証人2人とともに行き、所定の費用を支払う必要があります。作成のための要件は以下の通りです。

(1)証人2人以上の立会い

公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが必要です。証人になれない人は以下の通りです。

  • 未成年者

  • 推定相続人、受遺者、その配偶者および直系血族

  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

証人を依頼する際には、作成中ずっと立ち会ってもらう必要があるため、十分な時間を確保してもらいましょう。

(2)遺言者が遺言内容を公証人に口授

遺言者は、公証人に対し遺言内容を直接口頭で伝えます。覚書の利用は可能ですが、代理人による口授は認められません。

※遺言者が話せない場合は、手話通訳や自書による申述が認められます。

(3)公証人による筆記と確認

公証人が遺言内容を筆記し、遺言者および証人に読み聞かせるか、閲覧させます。

※遺言者が耳が聞こえない場合は、通訳人を介した確認も可能です。

(4)遺言者・証人の署名・押印

内容を確認後、遺言者および証人が署名・押印します。遺言者が署名できない場合は、公証人がその旨を付記します。

(5)公証人の署名・押印

公証人が作成手続きを終え、署名・押印を行います。

3. 公正証書遺言の費用

公証人手数料は目的物の価額に応じて異なります。下記の手数料額に11,000円を加算した金額が公正証書遺言作成の費用となります。

目的物の価額 手数料
100万円まで 5,000円
200万円まで 7,000円
500万円まで 11,000円
1,000万円まで 17,000円
3,000万円まで 23,000円
5,000万円まで 29,000円
1億円まで 43,000円

※1億円を超える場合は、5000万円増えるごとに加算額が発生します。

出張作成の場合

遺言者が病気等で公証役場に行けない場合、公証人が自宅や病院に出張することが可能ですが、その場合、手数料が50%加算されます。

4. 公正証書遺言のメリット

✅ 方式の不備による無効リスクなし

法律の専門家である公証人が作成するため、無効になるリスクが低い。

✅ 内容改ざんの防止

遺言書の原本が公証役場に保管されるため、変造や紛失のリスクがない。

✅ 検認不要

自筆証書遺言とは異なり、家庭裁判所での検認手続が不要。

✅ 文字が書けない人でも作成可能

口述や手話通訳を利用して作成できる。

5. 公正証書遺言のデメリット

❌ 費用がかかる

公証人の手数料が発生するため、自筆証書遺言よりコストがかかる。

❌ 手続きがやや面倒

公証人役場に証人2人とともに出向く必要がある。

❌ 遺言の内容が証人に知られる

証人の立会いが必須のため、遺言の存在や内容が証人に知られてしまう。

6. まとめ

公正証書遺言は、公証人のチェックを受けながら作成するため、遺言の無効リスクが低く、紛争防止にもつながります。手続きの煩雑さや費用がかかる点はありますが、確実な遺言を残したい方にとって非常に有効な方法です。

公正証書遺言の作成を検討される際は、専門家に相談するのがおすすめです。

📌 遺言・相続に関するご相談は「結の杜総合法律事務所」へ!

当事務所では、公正証書遺言の文案作成、公証人とのやり取りなどのサポートを行っております。まずはお気軽にご相談ください。

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📌 関連記事 【相続対策】自筆証書遺言とは?書き方・メリット・デメリットを徹底解説!

 

コラム「【相続の話】生前贈与があると、遺産が減る?知っておくべき『特別受益』のルール」

2025-01-31

相続の際、「生前贈与を受けた人は遺産が少なくなるの?」と疑問に思ったことはありませんか?

実は、相続人の中に生前贈与を受けた人がいると、その人が他の相続人と同じ割合で遺産をもらうと不公平になる場合があります。そのため、法律では「特別受益」というルールを設け、相続財産の計算方法を調整しています。

本コラムでは、生前贈与が相続にどう影響するのか、特別受益とは何か、具体的な計算方法についてわかりやすく解説します。

1. 特別受益とは?

「特別受益」とは、被相続人(亡くなった方)から生前に特別な贈与を受けた相続人がいる場合、その贈与分を考慮して相続財産を調整する制度です。

たとえば、被相続人が生前に子どもAに600万円を贈与していた場合、相続財産の分配に影響が出る可能性があります。

具体例

  • 相続財産:3000万円
  • 相続人:子どもA、B、C(各1/3ずつ)
  • Aは生前に600万円を贈与されていた

この場合、相続財産に600万円を加えた「3600万円」を基準に相続分を計算します。

  • 各相続人の基本相続分:3600万円 × 1/3 = 1200万円
  • Aの受け取る最終額:1200万円 - 600万円 = 600万円
  • BとCの受け取る額:各1200万円

このように、生前贈与を考慮することで、相続人間の公平性が保たれます。

2. 「持戻し免除」のルールとは?

被相続人が「生前贈与分は相続財産に含めない」と意思表示をしていた場合、「持戻し免除」が適用されます。これにより、生前贈与を受けた相続人が不利にならないケースもあります。

この意思表示は、

  • 明示(書面や口頭で明確に伝える)
  • 黙示(状況から判断できる)

どちらでも可能です。また、遺贈(遺言による財産の譲渡)の場合は、遺言書に記載が必要です。

3. 特別受益の期間制限

特別受益の持戻しには、期間制限があることにも注意しましょう。

重要なポイント

  • 遺産分割の請求は、相続開始から10年以内に行う必要がある
  • 生前贈与の持戻し対象は、相続開始前10年以内のものに限定される(遺留分を算定する場合)

この期間を過ぎると、特別受益を主張できなくなる可能性があります。遺産分割が長引かないよう、早めに対応することが大切です。

4. まとめ

生前贈与があると、相続財産の計算方法が変わることがあります。特別受益や持ち戻し免除のルールを理解し、相続トラブルを防ぎましょう。

「自分のケースではどうなるの?」と不安な方は、専門家に相談するのが一番です。

結の杜総合法律事務所では、相続に関するご相談を丁寧にサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

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コラム「【相続対策】自筆証書遺言とは?書き方・メリット・デメリットを徹底解説!」

2025-01-17

「自筆証書遺言」とは、自分一人で手軽に作成できる遺言書のことです。
公証人に頼る必要がなく、費用もかかりませんが、書き方を間違えると無効になるリスクも。
本記事では、自筆証書遺言の正しい作成方法、メリット・デメリット、そして確実に遺言を残すためのポイントを解説します。

1.自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言は、自分の手で全文を直筆し、日付・氏名を記入して押印 することで作成できる遺言書です。
法律で決められたルールに従わなければ無効となるため、慎重に作成する必要があります。

2.自筆証書遺言の正しい書き方【5つのルール】

1️⃣ 全文を直筆する
→ パソコンやワープロはNG。ただし、「財産目録」はパソコンで作成OK(その場合、各ページに署名・押印が必要)。

2️⃣ 日付を正確に書く
→ 「令和7年1月吉日」など曖昧な表記はNG。「2025年1月10日」など、具体的な日付を記載する。

3️⃣ 氏名を記載する
→ 通称・ペンネームでも可。ただし、本人特定ができるものを使用する。

4️⃣ 押印する
→ 実印でなくてもOK。認印・指印でも有効。

5️⃣ 訂正する場合のルールを守る
→ 訂正箇所を明示し、署名・押印をする必要あり。

3.自筆証書遺言のメリット・デメリット

メリット

  • いつでもどこでも書ける(公証人・証人不要)
  • 費用ゼロで作成可能
  • 内容を誰にも知られずに作成できる

デメリット

  • 紛失・改ざん・破棄のリスクがある
  • 書式ミスで無効になる可能性
  • 相続人が「検認手続」をしないと開封できない

4.【注意】遺言書は「法務局」で保管できる!

「遺言が見つからない」「偽造されるかも…」と心配な方は、**法務局の「自筆証書遺言保管制度」**を活用しましょう。
法務局に預けておけば、原本とデータが長期間保管され、相続人に確実に遺言が伝わります。
さらに、家庭裁判所での「検認手続」が不要になるメリットも!

詳しくは専門家にご相談ください!

5.失敗しない遺言書作成はプロに相談を!

自筆証書遺言は手軽ですが、法的なミスで無効になるケースが多いです。
「これで本当に大丈夫?」と不安な方は、ぜひ当事務所へご相談ください。

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コラム「相続における寄与分・特別寄与料とは?」

2024-12-13

1. はじめに

被相続人(亡くなられた方)を介護したり、一緒に仕事をするなどして財産の維持・増加に貢献した方は、相続の際にどのような取り扱いを受けるのでしょうか?

本記事では、相続における「寄与分」と「特別寄与料」について、要件や請求方法をわかりやすく解説します。

2. 寄与分とは?

寄与分とは、相続人の中で特別な貢献をした方に対し、法定相続分より多くの遺産を取得できる制度です。これにより、相続人間の公平が図られます。

2-1. 寄与分が認められる要件

寄与分が認められるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 特別な貢献があること
    • 一般的な親族間の扶養義務を超えた貢献が必要です。
    • 例:日常的な買い物の付き添い程度では不十分。
  • 相続開始前の行為であること
    • 被相続人が亡くなった後の葬儀や遺品整理などは寄与分に該当しません。
  • 被相続人の財産の維持・増加に貢献していること
    • 具体的に財産を守った、または増やした事実が求められます。
  • 無償で行われたこと
    • 介護や事業への関与などが報酬を受けずに行われていた必要があります。

2-2. 寄与行為の具体例

寄与分として認められる主な行為は、以下の5つに分類されます。

  1. 家事従事型(家業や事業に無償で従事)
  2. 金銭等出資型(被相続人の事業や生活のために資金を提供)
  3. 療養看護型(長期間にわたる介護)
  4. 扶養型(生活費負担などで被相続人の財産減少を防ぐ)
  5. 財産管理型(不動産管理や投資などを行い財産を増加させる)

2-3. 寄与分の主張期限

寄与分は、原則として相続開始から10年以内に主張する必要があります。

ただし、2023年4月1日以前に開始した相続では、相続開始から10年経過時点と2028年3月31日のいずれか遅い方まで主張可能です。

3. 特別寄与料とは?

特別寄与料とは、被相続人に無償で療養介護などを行い、財産の維持・増加に貢献した相続人以外の親族が相続人に対し請求できる金銭です。

3-1. 特別寄与料の要件

  • 相続人ではない親族であること(6親等以内の血族・配偶者・3親等以内の姻族)
  • 特別の寄与があること(長期間の無償介護など)
  • 無償で行われたこと(給与や報酬を受けていない)

3-2. 特別寄与料の請求方法

特別寄与料は、相続人との協議で決定します。

協議がまとまらない場合、相続開始及び相続人を知った日から6か月以内または相続開始から1年以内に家庭裁判所へ調停・審判を申し立てる必要があります。

ただし、2019年7月1日より前に開始した相続には特別寄与料の制度は適用されません。

4. まとめ

寄与分・特別寄与料は、相続において重要な役割を持つ制度です。

  • 相続人であれば寄与分を主張可能(ただし、特別な貢献が必要)
  • 相続人でない親族も特別寄与料を請求可能(療養介護などの無償の貢献が前提)

寄与分や特別寄与料の具体的な算定方法や調停・審判の手続きについて詳しく知りたい方は、ぜひ結の杜総合法律事務所へご相談ください。

専門の弁護士が丁寧にご説明し、最適な解決策をご提案いたします。

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コラム「【相続の話】配偶者居住権・配偶者短期居住権とは何か?」

2024-11-29

1. 配偶者居住権・配偶者短期居住権とは?

 配偶者が亡くなった後も、残された配偶者がそのまま自宅に住み続けられるのか、不安に思う方も多いでしょう。相続が発生すると、他の相続人との関係で、配偶者が自宅の権利を直ちに得られない可能性があります。そのため、2018年の民法改正により「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」が創設され、2020年4月1日より施行されました。

 このコラムでは、配偶者居住権・配偶者短期居住権の違いやメリット、注意点を詳しく解説します。

2. 配偶者居住権とは?

 配偶者居住権は、被相続人が所有していた建物に住み続ける権利を、配偶者に認める制度です。相続発生後も、配偶者は無償でその建物を使用し続けることができます。

◼️ 配偶者居住権が成立する条件

  • 相続開始時に、配偶者が被相続人所有の建物に住んでいたこと
  • 遺産分割で配偶者居住権を取得することが決まった場合、または遺贈の対象とされた場合
  • その建物が、被相続人の単独所有または被相続人と配偶者の共有であること

◼️ 配偶者居住権の期間

 原則として、配偶者が生存している限り有効です。ただし、遺産分割協議や遺言によって異なる取り決めが可能です。

◼️ 配偶者居住権の評価額の計算式

 配偶者居住権には財産的価値があり、相続税の対象となります。一般的な評価方法は以下の通りです。

  配偶者居住権の価額 = 建物敷地の現在価額 – 配偶者居住権付所有権の価額

3. 配偶者短期居住権とは?

 一方で、遺産分割が完了する前に、配偶者の住む権利が不安定にならないように設けられたのが配偶者短期居住権です。

◼️ 配偶者短期居住権の条件

  • 配偶者が相続開始時に、被相続人所有の建物に無償で住んでいたこと
  • 遺産分割が完了していない、または遺贈がない場合

◼️ 居住できる期間

  • 「遺産分割で建物の帰属が確定した日」または「相続開始から6ヶ月経過した日」のいずれか遅い日まで
  • 建物が第三者に遺贈された場合は、所有者が配偶者に対し消滅申入れを行ってから6ヶ月間

◼️ 相続税との関係

 配偶者短期居住権は「使用借権」に類似した法定債権であるため、財産価値がゼロとされ、相続税の課税対象にはなりません。

4. まとめ:配偶者居住権を活用して安心の相続対策を!

 配偶者居住権と配偶者短期居住権を正しく理解し、適切に活用することで、残された配偶者の生活を守ることができます。

  • 配偶者居住権:終身にわたり住み続けることができるが、相続税の課税対象となる
  • 配偶者短期居住権:相続発生後、一定期間無償で住めるが、財産価値はゼロ

 相続手続きをスムーズに進めるためには、遺言の作成や相続対策の事前準備が重要です。

 「具体的にどう手続きすればいいの?」「相続税がどのくらいかかるの?」といった疑問がある方は、ぜひ結の杜総合法律事務所までご相談ください。

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