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コラム「相続 寄与分・特別寄与料とは?」
被相続人(亡くなられた方)を介護したり、一緒に仕事をするなどして被相続人の財産の維持・増加に寄与した相続人又は相続人以外の方は、被相続人が亡くなられた際に何らかの恩恵を得ることができるのでしょうか。
これが、寄与分・特別寄与料の問題です。
1 寄与分
(1)概要
寄与分とは、相続人の中に、被相続人を療養介護をするなど、その財産の維持又は増加について、特別な寄与をした者がいる場合に、法定相続分に寄与に相当する額を加えた財産の取得を認め、相続人間の衡平を図ろうとする制度のことをいいます。つまり、そのような特別な寄与をした相続人は、遺産を通常よりも多く貰えるということです。
このような寄与分は、相続人にのみ認められるものですが、相続人以外の被相続人の親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族)が、特別の寄与をした場合は、相続人に対し、後述する特別寄与料の支払を請求できます。
(2)寄与分の要件
寄与分は、当事者全員の合意がある場合か、次の要件を充たす場合に認められます。
① 特別な貢献であること
被相続人と相続人との関係において通常期待される以上の特別な貢献であることが必要です。したがって、例えば、親子間において、週に1、2回程度通院や買い物に付き添うというような一般的な扶養の範囲と言える程度の貢献では足りません。
② 相続開始前までに行われた行為であること
寄与行為は、相続前、すなわち被相続人が亡くなる前の行為であることが必要です。そのため、被相続人が亡くなった後に、葬式や法要、遺品整理をしたなどの行為は該当しません。
③ 被相続人の財産の維持・増加との間に因果関係があること
寄与行為により、被相続人の財産が維持又は増加していることが必要です。
④ 無償で行われたものであること
寄与行為が、対価あるいはそれに相当する利益を得ずに、無償で行われていたことが必要です。
したがって、被相続人と一緒に事業を行っていても、相当額の給与を得ていたり、生活費を被相続人の収入で賄っていたり、被相続人の住居に無償で住んでいたり、成年後見人として報酬を受領しながら財産管理をしていたなどのような場合には、対価あるいは利益を得ていたと言え、寄与行為が無償で行われたとは認められません。
(3)寄与分はいつまで主張できるか
原則として、相続開始の時から10年です。
なお、2023年4月1日以前に相続が開始している場合は、相続開始から10年経過時点と2028年3月31日のいずれか遅い方の時点まで主張できます。
ただし、A.相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき、B.相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6か月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたときは、寄与分の主張をすることができます。
(4)寄与行為にはどのようなものがあるか
寄与行為の類型には次のようなものがあります。ただし、以下のような行為を行えば直ちに寄与分として認められるのではなく、それが「特別の寄与」といえる程度のものでなくてはなりません。
a)家事従事型(被相続人の事業に従事した場合)
b)金銭等出資型(被相続人に対し財産上の利益を給付した場合)
c)療養看護型(被相続人が被相続人の療養介護に従事した場合)
d)扶養型(相続人が被相続人を扶養し、被相続人が出費を免れたため財産が維持された場合)
e)財産管理型(被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合)
(5)寄与分はどのようにして決めるか
寄与分は、相続人全員の協議によって決めることができます。
もし協議が調わず、又は協議をすることができない場合には、家庭裁判所での調停又は審判によって決めることになります。
2 特別寄与料
(1)概要
上記の通り寄与分は相続人にしか認められませんが、相続人以外の親族が、被相続人に対して無償で療養介護などをして、被相続人の財産の維持又は増加した場合、その親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払を請求できます。
(2)特別寄与料の要件
特別寄与料の請求が認められるためには、寄与分の要件と同様、療養介護などの行為が無償で行われたこと(無償性)、療養介護などによって被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与があると認められること(特別の寄与があること)のほか、そのような労務を提供した者が被相続人の親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族)であることが必要です。
(3)特別寄与料はどのようにして決めるか
特別寄与料は、当事者間の協議で決めることができますが、協議が調わず、又は協議をすることができない場合は、家庭裁判所での調停又は審判によって決めることになります。
ただし、上記調停又は審判の申立ては、特別寄与者が相続の開始があったこと及び相続人を知った時から6か月を経過した場合、又は相続開始の時から1年を経過した場合にはできなくなります。また、2019(令和元)年7月1日より前に開始した相続に関しては、この申立てをすることはできませんので、注意が必要です。
3 まとめ
以上、簡単ではありますが、寄与分・特別寄与料についてご説明いたしました。
実際にご自身の行為が寄与分や特別寄与料が認められる程度のものなのか否か、認められた場合にどの程度の金額になるのか等、より詳しい内容についてお知りになりたい方はもちろん、調停・審判等の各種手続の内容及び利用の適否、実際にかかる料金等についてお知りになりたい方は、結の杜総合法律事務所まで、お気軽にお問い合わせください。直接弁護士より丁寧にご説明させていただきます。
コラム『相続 配偶者居住権・配偶者短期居住権とは何か?』
同居する夫婦の一方が亡くなった場合、他方の配偶者は、亡くなった方(被相続人)が所有していた建物に住み続けられるのでしょうか。
被相続人が亡くなると相続が開始しますが、被相続人の配偶者のほかに相続人がいた場合、遺言がない限り配偶者が遺産の全部(あるいは居住する建物)を直ちに取得するわけではないため、他の相続人から、遺産である建物から立ち退くよう請求されるのではないかと不安になる方もいらっしゃるかと思います。
近年の高齢化に伴い、配偶者に先立たれた他方の配偶者が、老後資金を確保しながら、それまで居住してきた住居に住み続けることを可能にするための制度創設の必要性が検討されてきました。そして、平成30年の民法改正により、配偶者居住権や配偶者短期居住権の制度が設けられ、令和2年(2020年)4月1日より施行されました。
1 配偶者居住権
配偶者居住権とは、遺産である建物に居住していた配偶者に、相続開始後も当該建物の全部を無償で使用収益することを認める権利です。
これは、配偶者が、被相続人が所有する建物に、相続開始時(被相続人の死亡時)に居住していた場合において、遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、又は、配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに成立します。ただし、その建物が、相続開始時において被相続人の単独所有か、被相続人と配偶者の共有でなければなりません。
配偶者居住権は、配偶者の終身の間存続するのが原則です。つまり、配偶者は、生存している間はそのまま住み続けられるということです。ただし、遺産分割協議や遺言に別段の定めがあるときや、遺産分割の審判において別段の定めがされたときは、それに従うことになります。
また、配偶者が居住する建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。
なお、配偶者が遺産分割において配偶者居住権を取得する場合は、他の遺産を取得する場合と同様、自らの具体的相続分(遺産に対する取り分)の範囲においてこれを取得することになるため、配偶者居住権の財産的価値を評価することが必要となります。そして、配偶者居住権の財産評価は、現在のところ、実務上はおおむね次のように算出するのが相当と考えられています。
(計算式)配偶者居住権の価額=建物敷地の現在価額-配偶者居住権付所有権(負担付建物所有権+負担付土地所有権等)の価額
さらに、配偶者居住権は、相続税の課税対象になります。
2 配偶者短期居住権
上記の通り、配偶者居住権は、遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、又は、配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに成立することとされています。そうすると、遺産分割前であり、かつ、遺贈もない場合、配偶者には、相続開始後も建物に居住する権利は一切ないのでしょうか。
実は、そういうわけではありません。
配偶者が、相続開始時に、被相続人の所有する建物に無償で居住している場合、配偶者短期居住権が成立します。
これは、相続開始時に被相続人の財産に属した建物に無償で居住していた配偶者に一定期間の無償居住を認める制度であり、建物について配偶者を含む共同相続人で遺産分割をすべき場合は、「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日」又は「相続開始の日から6ヶ月を経過する日」のいずれか遅い日まで存続します。
前記以外の場合(建物が配偶者以外の者に遺言により承継された場合等)には、居住建物取得者が配偶者短期居住権の消滅の申入れをしてから6ヶ月を経過する日まで存続します。
つまり、最短でも相続開始から6ケ月間は、配偶者の居住が確保されるということです。
なお、配偶者短期居住権は、相続を放棄した配偶者にも認められる権利であり、また、遺産分割協議の対象にもなりません。そして、その財産的価値は、使用借権類似の法定債権と位置付けられ、遺産分割が成立するまでの過渡的な権利であるため、使用貸借に係る土地の使用権と同様にゼロと考えられ、相続財産には当たらず、相続税の課税対象にもなりません。
3 まとめ
以上、簡単ではありますが、配偶者居住権、配偶者短期居住権の概要をご説明いたしました。
配偶者居住権や配偶者短期居住権のより詳しい内容についてお知りになりたい方はもちろん、遺産分割の進め方や、調停等の各種手続の内容及び利用の適否、実際にかかる料金等についてお知りになりたい方は、結の杜総合法律事務所まで、お気軽にお問い合わせください。直接弁護士より丁寧にご説明させていただきます。
コラム『相続登記をせずに放置しているとどうなる?』
このようなお悩みはありませんか?
「遺産分割がまとまらず、土地の名義が亡くなった方のままになっている」
「遺産分割をしないまま遺産である土地の名義を変更せずに長年放置していたら、その相続人も亡くなり、更に相続が発生して相続人の数が増え、手がつけられなくなってしまった」
相続登記とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた不動産を相続したときに行う、不動産の名義変更のことです。
相続が発生した場合、相続人間で遺産分割協議を行い、誰がどの遺産を取得するのかを決め、その結果、不動産を取得した相続人がいる場合は、法務局に申請し、その不動産の名義変更を行わなくてはなりません。
しかし、相続が発生しても相続登記をせずに長期間放置したため、その間に世代交代が進んでしまい、結果として所有者の把握が困難となり、不動産取引や都市開発の妨げになるという事態が多々生じていました。
そのため、法改正により、相続登記の申請が令和6年4月1日より義務化されることとなりました。
その主な内容は、次のとおりです。
① 相続(遺言含む。)によって不動産を取得した相続人は、取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならない。
② 遺産分割協議によって不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記をしなければならない。
③ 令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も対象となり、この場合、令和6年4月1日から3年以内、つまり令和9年3月31日までに相続登記をしなければならない。
④ 正当な理由なく上記義務に違反した場合は10万円以下の過料となる可能性がある。
このように、相続登記をせずに放置すると、登記上の名義人と実際の所有者が一致しないため不動産の売却ができなかったり、固定資産税等の税金の支払や不動産管理に関するトラブルが生じる可能性があることのほか、義務違反による過料が科される可能性もあることから、遺産分割協議がまとまらないからといってそのまま放置するのは得策ではなく、遺産分割調停・審判といった解決に向けた手続を検討すべきです。
結の杜総合法律事務所では、遺産分割協議・調停等の手続の流れや、利用の適否、実際にかかる料金等を事前に直接弁護士より丁寧にご説明させて頂いております。
また、遺産分割をしないまま長年放置したため、相続人が相当数に及んでしまい、遺産分割協議をすること事態が困難になってしまったというような場合でも、諦めることはありません。このような場合でも、弁護士がお話を詳しく伺った上で、最適な解決方法をご提案させていただきます。
まずはお気軽にご相談ください。
コラム『相続 特別縁故者とは何ですか?』
遺産を取得できるのは相続人のみであるのが基本です。もし、お亡くなりになられた方(「被相続人」といいます。)に相続人がいない場合、遺産は最終的に国に帰属してしまうことになります。
しかし、被相続人に妻や子どもがおらず、独り身である場合に、生前、そのご親族の方が身の回りの世話をしていることがあります。
このような場合でも、相続人ではないことを理由として、世話をした方は何の遺産も取得できないのでしょうか。
実は、そうではありません。相続人でなくても、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」(このような方を「特別縁故者」といいます。)について、家庭裁判所は、特別縁故者の請求によって、相続財産の一部又は全部を与えることができるとされているのです(民法958条の2)。
そして、どのような方が特別縁故者に該当するかどうかは、裁判例では、「被相続人の意思を忖度、尊重し、被相続人と当該縁故者の自然的血縁関係の有無、法的血族関係に準ずる内縁関係の有無、生前における交際の程度、被相続人が精神的物質的に庇護恩恵を受けた程度、死後における実質的供養の程度その他諸般の事情をしんしゃくして分与の許否およびその程度を決すべき」とされています(大阪高裁決定昭和44年12月24日・判タ255・317)。
特別縁故者に該当するかどうか、該当したとしてもどの程度の相続財産の分与が認められるかはケースバイケースではありますが、結の杜総合法律事務所では、相続人がいない被相続人が約1億1000万円の遺産を残してお亡くなりになられた事例で、身の回りの世話をしていたご親族の代理人として特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行い、9000万円の分与を獲得した実績がございます。
また、特別縁故者として相続財産の分与を受けるためには、まずは家庭裁判所に対して、相続財産清算人の選任申立てを行わなければなりません。
このように手続は単純・容易ではありませんが、結の杜総合法律事務所では、特別縁故者として認められる可能性があるかどうか、認められたとしてどの程度の相続財産の分与が認められ得るか、相続財産清算人選任の手続の流れや特別縁故者に対する相続財産分与の申立てまでの流れ、実際にかかる料金等を事前に直接弁護士より丁寧にご説明させて頂いております。説明を聞き、ご納得された上でお申込み頂けます。また、無理な勧誘なども一切しておりません。
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